苛立つサードポイント、ソニーへの圧力強化 投資ファンドにせまられる、ソニーの事業再編
「ソニーの成長ベクトルは有望だが、それを進めるには、パソコンとテレビ事業の再編に向けた真剣な取り組み、エンターテインメント事業の価値実現を図るいっそうの努力が必要だ」
1月21日、ダニエル・ローブ氏が率いるヘッジファンドの米サードポイントは、投資家に向けた四半期ごとの書簡の中で、ソニーの現状についてこう言及していた。
それから約2週間後、まさに書簡で名指しされたパソコン、テレビについて、ソニーは事業売却と分社化という形で手を打っている。これは偶然の一致ではないだろう。
1995年にローブ氏が友人や家族から330万ドル借りて起業したサードポイントが、ソニーの実質筆頭株主として登場したのは昨年5月。ローブ氏は映画や音楽などエンターテインメント事業の分離上場を迫ったが、ソニーの平井一夫社長は取締役会の結論として、この提案を拒否した。「エンタメもソニーの中核事業。ソニーが100%保有し続ける」と宣言してみせたのである。
ところが、10月末の中間決算発表で通期業績見通しを引き下げ、株価も下落。「ソニーのパフォーマンスが上がらず、2013年後半の日本の(投資)ポートフォリオには失望した」(前述の書簡)ことで、サードポイントはあらためてソニー経営陣へのプレッシャーを強めたわけだ。
そもそもサードポイントは、攻撃的かつ行動的な投資姿勢で知られる。米ヤフーへの投資では自ら取締役として乗り込み、共同創業者であるジェリー・ヤン氏を経営中枢から追放。前CEOの学歴詐称を暴き、後任にグーグル幹部だったマリッサ・メイヤー氏を連れてきた。
ローブ氏は再編への大きな絵を描くのも得意だ。最近では米携帯会社のTモバイルUSへ出資。出資先で米スプリントを傘下に持つソフトバンクの孫正義社長に対しては、「Tモバイルとスプリントの経営統合で200億~300億ドルの効率化効果が生まれる」とのアナリストの分析を基に、統合提案に乗るよう呼びかけている。