「資産売却」が本業?ソニー決算の異常事態 益出しの影響を除けば、今期業績は前期より改善

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経営陣の判断一つで営業利益をポンと積み上げられる──そんな手品のような利益捻出手段が、ソニーの経営をむしばんでいる。

2月6日、ソニーは第3四半期決算の発表と同時に2014年3月期の営業利益見通しを1700億円から800億円へ大幅に引き下げた。これは期中2度目の下方修正で、昨年5月に公表した2300億円の期初見通しと比べると3分の1近くにしぼむ。前期実績2301億円からの下落幅も大きい。ということは、「前期よりも業績は大幅に悪化している」と判断するのが普通だろう。

だが、実際はそうではない。ソニーは米国会計基準を採用しており、日本の会計基準では特別利益として認識されるような一時的な資産売却益も、本業の利益を示す営業利益の中に含めている。

たとえば昨年2月、出資先で医療情報提供を行うエムスリー株の一部譲渡に伴って、売却益と再評価益を合計1222億円も計上している。上図のように営業利益への上乗せ要因になった4つの資産売却益を足し合わせるだけで2380億円にも上る。この特殊要因がなければ前期の営業利益はほぼトントンだった。それに対し今期は200億円程度の資産売却益であっても800億円の営業利益を計上できるのだから、今期の業績は、むしろ大幅に改善しているといってもいい。

「前期実績」の高い壁

前期、そこまでして売却益の積み上げに邁進した理由は単純なものだ。12年4月に就任した平井社長は、長年にわたって期初の利益目標が達成できていないことを踏まえ、期初計画の営業利益1800億円必達を誓っていた。転換社債や普通社債による巨額の資金調達も見込んでおり、そのためにもしっかり黒字を確保することは重要だった。

ところが、デジタルカメラや平井社長の出身母体であるゲームなどが苦戦。第1四半期で早くも業績の下方修正(1300億円へ修正)を余儀なくされてしまう。何もしなければ、当初の利益目標を達成できないことが確実となり、奥の手として資産売却を繰り出すしかなかった。

その結果、実績は「営業利益2301億円」になった。エレキ事業の実力とは無関係な、この実績が今期計画の基点となってしまう。ソニーは昨年5月、営業利益の予想を前期並みの2300億円とした。「資産売却益などの特殊要因を見込まずに達成する」(加藤優CFO)としていたので、実質的には大幅な業績改善が求められる。

そのカギを握っていたのが、前期同様にエレキ。12年度は1344億円の赤字だったものが、13年度には1000億円の黒字に転換すると見込んだ。しかし、またもや主要製品の販売が大苦戦し、下方修正を強いられた。円高是正というプラス効果があったにもかかわらず、今期も赤字から抜け出すことができなかった。

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