「資産売却」が本業?ソニー決算の異常事態 益出しの影響を除けば、今期業績は前期より改善
むろん、ソニーは資産売却を行うだけでなく、コア事業への投資も行っている。平井社長が「将来の柱に育てていく」と位置づける医療事業では、12年にオリンパスに500億円出資し、協業を進めるための合弁会社を設立した。さらにパソコン、スマホ向けのネットワークゲームで知られるガイカイを300億円で買収。ネットワーク化が進むゲーム事業を後押しする体制を整えている。
直近では、CMOSイメージセンサーの製造能力を増強するため、ルネサスエレクトロニクスから山形県の鶴岡工場を取得。今来期で約280億円を設備の改造に充てる予定だ。センサー部門は10年後を見据えた中長期的な経営プランを立て、それに合わせ計画的な投資を行うことで成功体験を積み上げており、ソニーの中にあって異色の優良事業体だ。
こうしてみると、総花的な経営を脱し、投資すべきコア事業と再編・売却対象の事業をきっちり選別しているかのようにも見える。
が、ものによっては「場当たり」で選別している疑いもある。わずか1年でリチウムイオン電池事業への態度が一変したのだ。
13年年初の取材では「コア事業以外は、あらゆる可能性を考えていく」(平井社長)と説明し、再編に向けた交渉を行っていることを否定しなかった。この当時、得意とする電子機器向けの電池は韓国勢の躍進で採算が悪化。産業革新機構やNECと合弁設立の条件を話し合っているところだった。
ところが、昨年末までに条件面で折り合わず切り離しを断念。2月6日の会見で、平井社長は「エレキのコア3事業にはいずれもリチウムイオン電池が使われる。ラミネート型については重要な事業だ」と説明の仕方を変えてみせた。NECとの統合交渉にかかわっていた関係者は「事業をやったことのない人が投資家の目線で事業を見るから、こうなる。交渉を進めてきた当事者や現場のエンジニアからすれば、方針転換はたまったものではない」とため息をつく。
歴代トップが「勇退」
こうした場当たり的な対応を、平井社長のせいにするのは酷なのかもしれない。
ある有力OBは次のように指摘する。
「歴代トップはいずれも中長期の視点を持った経営ができなかった。その負の遺産をすべて現在の経営陣は引き継いでいる。ソニーの不幸は出井伸之氏、ハワード・ストリンガー氏など歴代の経営トップがいずれも『勇退』し、経営責任を取っていないこと。無責任体制が今の苦境につながっている」
1月27日、米ムーディーズはソニーの長期信用格付けを引き下げ、投機的水準とした。昨年11月には英フィッチも投機的に格下げしている。「ソニーが投資不適格という判断を受けるのは初めてのことだ」(加藤CFO)。蓄積されたひずみが、今、さまざまな形で噴出している。
(週刊東洋経済2014年2月22日号〈2月17日発売〉の核心リポートでは8ページにわたるソニー緊急特集を掲載しています。全編は週刊東洋経済をご覧ください)
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