オリンパスが今も背負う、巨額賠償の十字架 損失隠し発覚から2年半、信託6行が訴訟を提起

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損失隠し事件から2年半が経過した今年4月、オリンパスに対する新たな損害賠償訴訟が提起された

オリンパスの巨額の損失隠し事件が発覚してから2年半。事件に伴う株価下落などで損害を受けたとする国内の信託銀行6行が、東京地方裁判所に対し4月7日付で総額約279億円の損害賠償請求訴訟を提起した。

これまでオリンパスは事件に関連して、約20件、総額577億円となる損害賠償請求訴訟を提起されている。そのうち、資本業務提携関係にあるテルモが提起した66億円の訴訟は、60億円の和解金で終結。また、海外投資家からの380億円の訴訟については、一定のメドがついたとして2013年度に110億円の損失引当金を計上している。

こうして未処理の損害賠償請求額が131億円まで縮小した矢先に、オリンパスは新たに279億円という巨額の訴訟案件を抱えたことになる。

今回、オリンパスを提訴したのは、三菱UFJ信託銀行、日本マスタートラスト信託銀行、日本トラスティ・サービス信託銀行、資産管理サービス信託銀行、野村信託銀行、ステート・ストリート信託銀行の計6行。

なぜ今、提訴されたのか

ウッドフォード元社長の解任や関連報道をきっかけに損失隠し事件が周知され、株価が急落したのは2011年10月14日のこと。それから2年半が経過した今になって、なぜ巨額の損害賠償請求が起きたのか。

原告関係者は、「事件発覚後から損害賠償訴訟の準備を進めていたが、関係者が多いため、調整に時間がかかった」と語る。

ウッドフォード社長(当時)の解任騒ぎが、損失隠し発覚の端緒となった

また、今回訴訟の提起に踏み切った背景には、損害賠償訴訟を起こせる期限が迫っていたことが関係している。

有価証券報告書等の虚偽記載に関連する損害賠償を規定した金融商品取引法21条の時効は2年。ウッドフォード元社長の解任と関連報道によって株価が急落した11年10月14日を起点とすると、13年10月で時効を迎えることになる。

そのため、原告関係者によると、13年10月に時効の停止をオリンパスに申請。停止の期限が半年間となるため、期限内でギリギリのタイミングとなる14年4月に訴訟を提起したという。

しかし、金商法21条の時効成立によって、今後の損害賠償訴訟のリスクがなくなったというわけではない。

西村あさひ法律事務所の森本大介弁護士は、「民法上の不法行為(民法709条)の時効は、行為を知った時点から3年、あるいは行為の時点から20年。これに関する損害賠償の請求権に関しては、まだ訴訟を提起される可能性は否定できない」と語る。

たとえば、事件当時の筆頭株主であり、現在もオリンパスの発行済み株式の3.87%を保有する日本生命保険は、現時点で損害賠償訴訟を提起していない。ただ、「さまざまな状況を勘案して、訴訟を起こすかどうかも含めて検討を続けている」(日本生命の広報担当者)という。

なお、オリンパスは今回提起された損害賠償訴訟の業績への影響について、金額が明らかになりしだい、2014年度以降の計画に反映させる方針。損失隠し事件の負の遺産から、いまだオリンパスは脱却できずにいる。

(撮影:尾形文繁)

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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