日本のハンコ文化がどうしようもなくダメな訳 行政のデジタル化を待っていては後れを取る

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最近、急速に増えたものに「電子署名」があるが、「電子署名法」という法律に基づいて行われている「脱ハンコと紙」を推進する法律だ。電子署名というのは、クラウド内にあらかじめ設定した電子的な証明機能で、電子署名を「押印」とみなすものだ。

問題なのは、20年前に制定された電子署名法には「契約を本物とみなす明確な規定がない」ことだ。現在、日本で電子署名のシェアを8割占めている「弁護士ドットコム」の電子署名は、PDFなどで契約書面をネットで互いに表示し、お互いに同意すれば第三者である弁護士ドットコムが「契約が成立したことを確認する」という電子署名を行う方法になっている。

しかし、電子署名法では契約の当事者ではない第三者が行った電子署名が法的に有効かどうかの規定がない。要するに、日本ではまだ法的に曖昧なまま電子署名が普及しつつあるということだ。

また、ややこしいのは日本では法的に押印、署名を義務化している法律はそう多くないのだが、社内規定で厳格に規定している企業が多いということだ。社内の稟議書や工程表の署名捺印を法律が義務づけているわけではない。大企業であればあるほど、署名、押印した紙による厳格な文書管理にこだわるところが多いと言われる。

しかし、今回のコロナによるパンデミックでLINEやメルカリといったIT企業は相次いで、社内だけではなく社外との契約でも押印や文書による契約を廃止して電子署名に切り替えつつある。政府や企業の「紙とハンコによる認証」からの脱出ができるかどうかは、民間企業だけが進めても実現は難しく、行政が足並みをそろえなければ形骸化してしまう。

確かに、日本でも一部では電子署名のシステムが徐々にではあるが稼働しつつある。最大手の「弁護士ドットコム」は2015年から「クラウドサイン」という電子署名サービスを提供しており約8万社が加入。新型コロナでテレワークが急増し、4月は前年同月比の3倍の企業が新規導入したとされる。

続々進出してきた外資の「電子署名」ビジネス

しかし、電子署名の導入は日本企業ではまだまだ少なく、ほんの一部でしかない。例えば、世界200カ国で66万件の顧客を抱えるアメリカの電子署名サービスを提供する「ドキュサイン」は、2015年に日本に市場参入したが、まだ日本では知られていない。日本企業の特性に合わせて、電子認証する際に通常の「手書きのサイン」に加えて「ハンコ」の画像を張り付けるシステムまで作って電子署名の普及に努めている。

日本企業の場合、社内の意思決定の際にも「稟議書」などにサインではなく「ハンコ」を押す習慣があるが、社内で稟議書を各部署に送信する際に、ハンコの画像がついていればこれまでと同じスタイルで回覧可能になるのかもしれない。

さらに、PDFファイルで知られるアメリカの「アドビシステムズ」は「文書管理ソリューション」のサービスを通じて、電子署名サービス「アドビサイン」を提供している。また、日本では高いコストがかかる電子認証サービスを利用料無料で提供する「e-sign(イーサイン)」を提供するのはエストニアと日本に拠点を置く「ブロックハイブ」だ。

ちなみに、電子商サービスの提供会社は日本国内企業でもセイコーソリューションズ(かんたん電子契約)やGMOクラウド(GMO電子印鑑Agree<アグリー>)、ソフトバンク系の「SB C&S」(サインナップワン)などが提供している。

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