中国の強硬姿勢を支える「田中角栄」の置き土産 第1段階合意から半年、情勢悪化のナゼ
米中貿易協議における「第1段階の合意」が結ばれてから、7月15日でちょうど半年になる。
ところが、6月末に中国政府が「香港国家安全維持法」を成立・施行させ、香港から「高度な自治」「一国二制度」を事実上、剥奪したことにアメリカが反発。対中圧力を強め、もはや「米中貿易戦争」から「米中冷戦」ともいえる状況に陥って、第1段階の合意の履行も危ぶまれている。
こうした中で中国を優位に立たせているのが、日本の故・田中角栄元首相の存在だ。
アメリカからの大豆輸入シェアは激減
第1段階の合意内容は、この2年間で中国はアメリカからモノとサービスの輸入を2017年より2000億ドル以上増やすというもの。工業製品や液化天然ガス(LNG)をはじめとするエネルギー、農産品が主な内訳だ。
貿易戦争前のアメリカの対中輸出の内訳は、13%が航空機で、大豆が9%、乗用車が8%と続く。大豆は、2017年に全米で生産された58%が中国に輸出されていた。対中貿易の要ともいえる。
中国に輸入された大豆は、主に食用油と飼料として使われる。ただ、一昨年から中国国内では「アフリカ豚熱(旧称・アフリカ豚コレラ)」が蔓延。国内で飼育される豚の数が減ってしまったことから、飼料の需要も落ち込んだ。だから、貿易戦争でアメリカ産大豆に25%の報復関税をかけても、ただちに困ることにはならなかった。
それが国内の養豚業が復調してきたところで、中国はアメリカに代わって、ブラジルからの大豆輸入を急増させている。すでに2018年の中国の大豆の輸入先シェアは、ブラジルが前年の53%から75%に増加。その一方で、アメリカは34%から19%に落ち込んでいる。
中国の独立系経済メディア「財新」の報じたところによると、今年3月のブラジルの大豆輸出量は1330万トンで、このうち中国向けが約4分の3を占めていた。4月には前年同月の1.7倍強となる1630万トンまで増加。3月に続いて単月輸出として最高記録を更新した。おかげで、今年は大豆が豊作のブラジルだが、値崩れすることもない。
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