全世界に感染拡大した新型コロナウイルスによって、世界的な食料危機が起ころうとしている。それは日本も例外ではない。
国連食糧農業機関(FAO)や世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)の各事務局長は3月31日、「食料品の入手懸念が輸出制限につながり、国際市場で食料品不足が起きかねない」と共同声明を出した。
いったい食料供給の現場で何が起きているのか? 懸念される事情をまとめてみる。
まず、1つめは、世界的に穀物の供給が滞りはじめたことだ。
世界最大の小麦の輸出国であるロシアが、小麦の輸出を停止した。当初は、4〜6月間の小麦の輸出量を700万トン(前年同期の輸出実蹟約720万トン)に制限していたのだが、この輸出業者への割り当てが終了したとして、4月26日に停止を発表した。
ロシアが輸出規制の動きを見せはじめた3月中旬以降は、これに呼応するように、東欧の穀倉地帯にあたるウクライナや、カザフスタンも既に小麦の輸出制限をかけている。
コメの世界最大の輸出国であるインドは、コメと小麦の輸出を停止している。コメの輸出でタイに次ぐ世界第3位のベトナムも輸出禁止の措置をとった。ただし、こちらは4月10日に解除している。いずれにしても、自国の事情を優先したことによる。
このように、穀物など食品輸出を制限する国が続出している。主要20カ国(G20)が4月21日に食料の輸出規制回避で共同声明を発表しているが、その効果も見通せない。
2008年にも起こった食料危機
この状況で思い出されるのは2008年の食料危機である。世界の食料価格、それも主食穀物の価格が高騰して、輸入に頼る貧困国では食料が買えなくなり、暴動が起き、餓死者まで出た。当時の国連の食料問題の担当部署では、1億人が食料不足の危機に曝されているとして、この事態を「静かなる津波」と表現した。
原油価格の高騰や、当時のアメリカ政府によるバイオ燃料の推進で原料となるトウモロコシの価格が上がったこと、それに世界的な小麦の不作に、穀物相場に投機筋が流れるなど、様々な要因が重なったものだが、日本でも値上がりの余波を受けた。
また、それに応じて、国内のインフレから食品価格の高騰を懸念したインドやベトナムが、当時もコメの輸出を停止したことがコメの価格を押し上げた。
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