渋沢栄一が「論語と算盤」の両立を力説した意味

「論語か算盤」の選別ではなく創造に結びつく

渋沢栄一の出身地、埼玉県深谷市に飾られている記念像(写真:M-N-S/PIXTA)

渋沢栄一といえば、500社もの会社の設立に関与したシリアル・アントレプレナーとして有名だ。『33歳の決断で有名企業500社を育てた渋沢栄一の折れない心をつくる33の教え』(東洋経済新報社)の著者、渋澤健氏はその玄孫(やしゃご)にあたる人物。栄一から数えて5代目になるという。

「日本の資本主義の父」と呼ばれる栄一が残した『論語と算盤(そろばん)』は、いまなお広く読み継がれる談話録だが、同書を中心に、ビジネスパーソンに覚えておいてほしい栄一の言葉をまとめているのが本書である。

『論語と算盤』が出版されたのは、大正デモクラシーの中で経済がバブル化し、若い人を中心に立身出世、金儲けが注目された1916年のこと。そうした時代背景の中で出されたこの本で注目すべきは、「一見して相反する2つ」を融合させたことにあると渋澤健氏は指摘している。

商売で儲けたいなら、「慈善活動ではないのだから、多少は道徳に反することでも致し方ない」と考えがちだ。かといって道徳ばかりを重視していると、「儲かる案件も儲からなくなる」可能性が生じる。

「論語か算盤」ではなく「論語と算盤」

つまり論語と算盤は相反するもので、多くの利益を追求するにあたっては、どうしても道徳は無視されがちだということ。しかし、そうではないと考えたのが栄一で、だから「論語か算盤」ではなく「論語と算盤」だというのである。

なお、いま改めて『論語と算盤』に注目することにも、大きな理由があるようだ。

日本は、バブル経済の崩壊によって「失われた20年」とも言われる長期の低迷を経験し、その間に人口減少に転じました。
いまの日本も、渋沢栄一が活躍した時代と同じように先が読めない、難しい時代に入っていますが、大変革の時代には、若い人が活躍するチャンスが訪れます。
現状を嘆いて立ち止まってしまうのはもったいない。渋沢栄一のように未来を信じる気持ちを強く持てば、きっといまの停滞ムードを吹き飛ばせるはずです。(「はじめに」より)

もちろん、過酷なビジネスの現場に身を置いていれば、時には心が折れそうになることもあるだろう。しかし、そんなときにこそ、渋沢栄一が残した言葉に触れ、“未来を信じる力”を取り戻してほしいと渋澤健氏は訴える。

たしかに、コロナ禍によってさらに先が見えにくくなっている状況だからこそ、それは重要な視点なのではないだろうか?

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