渋沢栄一が「論語と算盤」の両立を力説した意味 「論語か算盤」の選別ではなく創造に結びつく

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ただし「無欲は怠慢の基である」と言ってはいるものの、栄一が求めているのは、「世の中をもっとよいものにしたい」という、よりよい社会の実現に対する欲。それを率先垂範したのだ。

官尊民卑の傾向が強かった世の中にあって、民間の力をより強いものにするため、将来の日本の成長に必要な会社を次々と立ち上げていったわけである。なお、そのうち186社が現存しており、みずほ銀行、王子製紙、東京海上日動、帝国ホテル、サッポロビール、東洋紡、IHI、清水建設、いすゞ自動車、太平洋セメント、川崎重工業、第一三共、朝日生命など、超有名企業ばかりが並ぶ。

しかし、いずれにも「渋沢」の名は冠されていない。いわば栄一は、日本経済の「影の立役者」的な存在だったのだろう。

また栄一は、生涯を通じて「合本主義」を理想としていた。それは、公益を追及するのに最適な人材と資本を集めて事業を推進し、そこで得た利潤を、出資した人同士で分け合うという考え方だ。だが渋澤健氏はそれを、近年、欧米財界トップが提唱している「ステークホルダー資本主義」の原型であると解釈しているそうだ。

いずれにしても「合本主義」を強く推し進めることにより、自身が青年時代から“解決すべき社会の課題”と考えていた官尊民卑の風潮にメスを入れていったのである。

「か」ではなく「と」の精神を持て!

冒頭で、「論語か算盤」ではなく「論語と算盤」であることの重要性について触れた。さらに詳しくいえば、この点について渋澤健氏は「との力」を持つことの重要性を説いている。

「との力」に対する、もう1つの大きな力が「かの力」だ。「か」とは、「or」。右か左か、上か下か、白か黒か。デジタルの世界でいえば、ゼロか1かの世界。何かを進めるにあたり、物事を区別し、選別して進めることで効率性を高めることができる。すなわち、それが「かの力」である。

もちろん「かの力」は、組織を運営していくうえで不可欠な力である。また、A店とB店の値段を比較するなど、日常生活においても必要となってくる。

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