観光業"復活"のヒントは「台湾星のや」にあった コロナ下で叩き出した驚異の稼働率7割超え

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「着いてみると、スタッフの皆さんがマスク姿で安心しました」。そう語るのは、台湾南部の高雄から、2歳になる娘の郁寧ちゃんを連れて2泊3日でやってきた温大瑋さんと劉欽云さん夫妻だ。

台湾では家族旅行が主流。3世代で利用する客が多く、客室を複数予約するケースも珍しくない(撮影:五味稚子)

二人は30代後半で、普段は公務員として働く。今回は有給休暇を利用してやってきた。夫妻は以前、東京の星のやを利用したことがあった。台湾進出を知って、タイミングを図っていたという。

それまで夫の温さんは谷關に来たことさえなかった。対して「子どもの頃に親に連れられて温泉に来たことがある」と話すのは妻の劉さんだ。

滞在期間中、温さんはSNSを通じて星のやの様子を伝えた。友人たちは皆「いいなあ」「うらやましい」と口々にコメントした。「秋にまた来たいですね。日本への旅行が解禁になったら、星のや竹富島もいいなと思っています」と笑顔を見せた。

客とともに作り出す安心

コロナ禍で、星のやグーグァンの利用客に1つの変化が起きた。それは、予約する前に自ら、施設に対しどんな防疫体制をとっているのか確認する人が出てきたというのだ。

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コロナといえども旅行はしたい。でも、危険な目にはあいたくない。安心して旅を楽しみたい。そんな気持ちから出た行動だろう。ホテル任せにしない姿勢は、客もまた、安心を作り出す担い手だともいえる。

台湾の新型コロナ対策が優れていた。それは誰しもが認めるところだが、移動の禁じられた世界で、観光業界が厳しい局面に立たされているのは台湾とて例外ではない。

そんな中でズバ抜けていた星のやグーグァンの稼働率。立地、施設設備、スタッフ、客、あらゆる要素が支えた結果だろう。そして、この姿は今後の観光に大きなヒントをもたらしているような気がしてならない。

田中 美帆 台湾ルポライター

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たなか みほ / Miho Tanaka

1973年愛媛県生まれ。大学卒業後、出版社で編集者として勤務。2013年に退職して台湾に語学留学へ。1年で帰国する予定が、翌年うっかり台湾人と国際結婚。上阪徹のブックライター塾3期修了。2017年からYahoo!ニュース個人オーサー。雑誌『& Premium』でコラム「台湾ブックナビ」を連載。2021年台湾師範大学台湾史研究所(修士課程)修了。

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