もうひとつ、注意点があります。2012年末からの1年間で20%近く円安ドル高が進んだにもかかわらず、海外旅行者は微減にとどまったということです。
海外旅行があまり減らない2つの理由とは?
この理由は、2つあると考えられます。ひとつは、現在、団塊世代の定年退職者数がピークを迎えつつあるということです。そこで、「退職金をもらったから、健康で動けるうちに旅行に行こう」と考える人が増えていると思われます。
もうひとつは、景気回復や、株高や不動産価格の上昇により資産額が増えて、消費が促される資産効果の好影響が出ているのではないかと考えられることです。ちなみに、旅行業に関しては、消費税増税前の駆け込み需要はほとんどありません。旅行は買いだめることができないからです。ただし、料金が安いうちに行っておこうというインセンティブは少し働いた可能性はあります。いずれにしても、4月以降は消費税率上げもあり、給与が上がらない限りは、消費が減ると考えられますから、旅行にどのような影響が出るかは興味深いところです。
また、円安や団塊世代の退職という2つの要因は、国内旅行の取扱高・取扱人数をも押し上げました。
以上が旅行業の現状です。では、実際のところ、旅行各社の業績はどのように推移しているのでしょうか。HISとKNTの決算内容を分析してみましょう。
HIS、KNTとも、業績は好調
まずはHISの平成26年10月期 第1四半期決算(2013年11月~2014年1月)から見ていきます。HISは海外・国内旅行ともに取り扱う総合旅行会社ですが、国外への格安航空券の販売や海外パッケージツアーなどの商品を主力としていることから、海外旅行の取り扱いは業界1位となっています。ですから、円安が進んだことでどれだけ海外旅行取扱額に影響が出たか、わかりやすいのではないかと思います。
損益計算書(7ページ)から収益を調べますと、売上高は1083億円から1223億円まで12.9%伸びています。ただ、円安の影響などから、売上原価は878億円から989億円まで12.7%増え、営業利益は32億円から40億円までの増加となりました。
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