第2に、円相場の動向です。円安が進むほど、中国のみならず欧米や東南アジアからの観光客が増えると期待できます。たとえば、ドル/円レートは2012年末から1年間で約20%も円安が進みましたが、これは米国人からみると、日本での宿泊費や交通費がそれだけ安くなったということです。この影響は非常に大きいでしょう。
ドル/円相場は、今年に入ってから現在(4月22日現在)にかけて、ほぼ1ドル=101~104円台で推移していますが、今後はどこまで円安が進むのか。この点が注目ポイントとなります。私は、中長期的には、シェール革命によって米国の貿易収支が改善し、さらには、エネルギーコストが下がることなどから、米国経済のファンダメンタルズ(基礎力)が改善し、円安ドル高が進むのではないかと予測しています。
第3に、欧米景気の動向です。先ほども触れた「国・地域別 訪日観光客数(暫定値)」を見ますと、アジアだけでなく、欧州や米国からの観光客も少なくはないですから、欧米の景気にも注意を払うことが大切です。
今のところ、米国経済は堅調に推移しており、欧州経済も小康状態となっていますので、世界経済は少しずつ回復に向かいつつあると言えます。ただし、ウクライナ情勢などの火種がありますし、ギリシャ危機に端を発した欧州債務問題も根本的に解決したわけではありませんから、油断はできません。
第4に、日本国内の景気、特に、アベノミクス効果がいつまで続くのかという点です。正直なところ、私は、アベノミクスはすでに息切れしつつあるのではないかと感じています。
昨年4月以降、異次元緩和によってマネタリーベース(日銀券と日銀当座預金残高の合計)が急速に増え続けています。こうして増えたおカネが企業や個人に貸し出されなければ、景気はよくならないわけですが、肝心の「銀行計貸出残高」や「M3(現金通貨と民間金融機関の預金の合計)」の増え方が鈍化し始めているのです。
アベノミクスが本格的にスタートしてから1年が経過しましたが、この間、異次元緩和によって円安が進み、それが株価の上昇をもたらしたことで景気が回復してきました。ところが、今年に入ってから株価の伸びは止まってしまい、2014年4月11日には、日経平均株価は1万4000円を割り込んでしまいました。これは2013年12月に付けた直近の最高値(終値ベース)である1万6291円よりも2割近くも下げたことになります。
以上の点から、私はアベノミクス効果が薄れ始めたのではないかと感じるのです。そのうえ、4月から消費税率が引き上げられましたから、このままでは、国内景気を牽引してきた資産効果がしぼんでいくのではないかと危惧しています。
先ほど見ました「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」によると、全体の取扱額のうち、60%強が国内旅行で占められますから、国内景気の動向は旅行業に大きく影響しますし、逆に国内の観光地などの景気に大きな影響を与えます。
以上の4点と併せて、旅行会社の決算に着目するとよいでしょう。
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