円安で不利か、と思われた業種のその後は? JXと吉野家を分析する

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 2012年末から昨年までの1年間で、円相場は対ドルで20%近く下落しました。この円安効果によって、輸出関連産業などは好業績を上げましたが、逆に業績が圧迫された業種もあります。たとえば、原材料の輸入が多い会社は、円安の悪影響を大きく受けたと考えられます。
そこで今回は、石油精製販売大手のJXホールディングス(以下、JX)と牛丼チェーンの吉野家ホールディングス(以下、吉野家)の決算を見ながら、業種ごとの財務的な特徴を踏まえたうえで、実際にどれだけ円安の影響を受けたのかを考えてみたいと思います。
従来とは一線を画した高価格の牛すき鍋膳を発売、牛丼の並盛も、280円から300円に。吉野家は変わり始めた(撮影:今井康一)

円安の輸入増分をうまく価格転嫁したJX

はじめに、JXの平成26年3月期第3四半期決算(2013年4~12月)を見ていきましょう。損益計算書(8ページ参照)から収益状況を調べますと、売上高は前年同期の8兆0545億円から今期は9兆0035億円まで増えています。これは、円安の影響で原油の仕入れ価格が上がり、その上昇分を石油製品の販売価格に転嫁したことが主な理由です。

そして販売費及び一般管理費(販管費)が微増し、営業利益は1350億円から2017億円まで増加しました。

私はこの決算書を見る前、JXのように輸入の多い業種は、円安の悪影響から業績が悪化しているのではないかと考えていました。ところが、JXを見るかぎりは、改善していたのです。確かに売上原価は増えていますが、売上高原価率(売上原価÷売上高)を計算しますと、前年同期は93.5%、今期は93.2%とほぼ横ばいですから、うまく価格転嫁が進んでいたことがわかります。

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