また、吉野家の有利子負債を計算しますと、306億円となります。これは資産合計に対して31.6%しかありませんし、純資産合計422億円より下回る金額ですから、少ない額だと言えます。一方、JXの場合は、純資産合計2兆5954億円を上回る約3兆円もの有利子負債を抱えています。JXのような石油精製業は資金負担が重く、吉野家のような外食業は資金余裕が生まれやすい業種だと言えます。業種によって、こうした“癖”があるのです。
今後の2社の業績はどうなる?
2社の決算を分析する前、私はひとつの仮説として、円安によって収益が悪化しているのではないかと考えていました。確かに吉野家には当てはまりましたが、JXについては、価格転嫁が成功したことで、円安が逆に追い風となっていたのです。
今後の見通しとして、注意点が2つあります。ひとつは好材料で、今のところ円安がある程度止まっていますから、今後しばらくは輸入コストがそれほど増えないと予測されることです。ただし、中長期的には米国経済は回復基調なので、さらに円安に振れる可能性があります。
そして、問題は、消費税増税の影響です。吉野家を含む牛丼大手は、消費税増税をにらんで価格変更を行いました。主力商品である牛丼並盛りについて、吉野家は280円から300円、松屋は280円から290円に値上げしますが、すき家は逆に280円から270円(税込)へ10円の値下げに踏み切りました。
吉野家は20円の値上げによってライバル店より若干高価格となりますが、この価格改定に伴って、牛丼の味や品質の改良を進めた新しい牛丼を4月以降に提供していくと発表しました。価格競争より品質へのこだわりにシフトしたのです。牛すき鍋膳が高価格帯であるにもかかわらず成功したことからも、品質が成功のカギを握ると考えたのでしょう。
牛丼各社の戦略がどのような結果になるかはわかりませんが、吉野家の「味」にこだわる方針には期待できるのではないでしょうか。
もちろん、JXを含む石油精製業も増税の影響を受けると考えられます。石油連盟は、消費税増税や温暖化対策税の引き上げに伴って、1リットル当たりのレギュラーガソリン価格が約5円値上がりするとの試算を発表しました。この上昇幅は大きいですから、消費者は今まで以上に節約志向が強まるでしょう。業績に影響が出る可能性もあり、今期の決算には注意が必要です。
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