円安で不利か、と思われた業種のその後は? JXと吉野家を分析する

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まとめますと、この業種は固定資産や棚卸し資産に莫大なおカネがいるうえ、受取手形及び売掛金と支払手形及び買掛金のギャップから資金負担がかかるため、その分を有利子負債で賄っているというわけです。さらに、非常に利益率が低いですから、資金負担が重い割にはそれほど儲からない業種だと言えます。

ただ、会社の中長期的な安全性を示す自己資本比率(純資産÷資産)は、32.4%ありますから、十分安全な水準です。

円安に苦しむ吉野家 牛すき鍋膳で逆転なるか?

次に、原材料の牛肉を米国から輸入している吉野家の平成26年2月期第3四半期決算(2013年3~11月)を分析します。吉野家の決算期は、JXと異なることに注意してください。

損益計算書(8ページ参照)から見ていきますと、売上高は前年同期の1208億円から今期は1276億円まで伸びています。これは、2013年4月18日以降、牛丼並盛りを380円から280円に値下げしたことが功を奏したのです。単価は下がりましたが、売上高は増加したのです。さらに、積極的に新しいメニューを追加したことや、郊外店での集客を伸ばすためにドライブスルーを設置するなどの戦略も、売り上げ増に貢献しました。

ところが、やはり円安による原材料高の影響で、売上原価が432億円から481億円まで増えてしまい、売上総利益は微増にとどまりました。売上原価率を計算しますと、前年同期は35.8%、今期は37.7%と2%近く上昇しています。牛丼の値下げと原料高によって、採算が悪化したことがわかります。

さらに、牛丼値下げの告知などに広告コストがかかったことで販管費が増えてしまい、営業利益は12億円から3億円まで減少しました。経常利益は10億円となりましたが、店舗の閉鎖などで減損損失4億円がかかり、最終的には四半期純損失2億円を計上したのです。

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