円安で不利か、と思われた業種のその後は? JXと吉野家を分析する

✎ 1〜 ✎ 34 ✎ 35 ✎ 36 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

ただ、売上高営業利益率(営業利益÷売上高)は2.2%しかありません。この指標は、数字が大きいほど本業でより効率的に儲けているということですが、JXは低水準なので、もともとマージンの低い業種だと言えます。

石油業は、設備投資や備蓄に巨額の費用がかかる

次に、貸借対照表(同6~7ページ)を見ていきます。気になるのは、社債や借入金などの有利子負債を多く抱えているという点です。「負債の部」から有利子負債を合計しますと、3兆0019億円もあるのです。なぜ、JXはこれほど巨額の有利子負債を抱えているのでしょうか。

その答えは「資産の部」にあります。土地や工場などが含まれる「有形固定資産合計」が2兆3462億円、石油の備蓄などを含む「棚卸し資産」が2兆0444億円計上されています。つまり、精製設備や石油の備蓄に、巨額の資金がかかっているのです。

もうひとつ、注意点があります。「受取手形及び売掛金」が1兆4640億円計上されています。企業に対して商品やサービスを販売する場合、現金決済はほとんどなく、「受取手形」や「売掛金」として数カ月後に代金を受け取るのです。これが、「資産の部」の「受取手形及び売掛金」に計上されます。逆に、企業から商品を仕入れたものの、まだ支払っていない代金は「負債の部」の「支払手形及び買掛金」に計上されるのです。

この受取手形及び売掛金1兆4640億円という金額は、月商約1兆円をはるかに上回っています。一方、支払手形及び買掛金は8835億円です。つまり、支払いを猶予されている金額(支払手形及び買掛金)が、まだ受け取っていない金額(受取手形及び売掛金)より5805億円少ないということですから、その分、資金負担がかかっているのです。

次ページ吉野家の逆襲は、本当にあるのか?
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事