円安で不利か、と思われた業種のその後は? JXと吉野家を分析する

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ただ、吉野家は2013年12月5日から「牛すき鍋膳」を発売し、開始から約2カ月で累計700万食を販売する人気商品となりました。牛丼並盛りの価格より2倍以上高い580円(並盛り)という、メニューの中では高価格帯であるにもかかわらず、売れ行きが好調なのです。ちなみに、今回分析した決算は昨年11月30日までのものですから、牛すき鍋膳の売り上げはまったく含まれていません。この大ヒット商品によって、同社は4月4日に通期の業績を増額修正しました。終わった期の解説はもちろんですが、今期の決算予想(本決算は、4月11日発表予定)に注目です。

続いて、貸借対照表(同6~7ページ)の分析に移ります。自己資本比率を計算しますと43.6%ありますから、非常に高い水準です。安全性にはまったく問題がありません。

一方、企業の短期的な安全性の目安となる流動比率(流動資産÷流動負債)は、75.5%です。この指標は、一般的には120%あれば安全だと判断されますが、吉野家のように日銭が入ってくる業種ですと、75%程度でも十分回ります。

もうひとつ注目したいのが、JXでも触れた受取手形及び売掛金と支払手形及び買掛金の差額です。吉野家の場合、受取手形及び売掛金は35億円、支払手形及び買掛金は56億円ですから、支払いを猶予されている金額のほうが21億円多くなっています。日銭が入ってくる商売であるうえ、仕入れなどの費用は後で支払いますから、その分、資金余裕が生まれるというわけです。

さらに「資産の部」を見ますと、「商品及び製品」が30億円計上されています。それに対し、吉野家の1カ月当たりの売上原価は53億円ですから、約半月分の在庫しか持っていないということになります。

ちなみに、先ほど分析したJXの場合、たな卸資産が2兆0444億円もありました。1カ月当たりの売上原価は9321億円ですから、同社は約2.2カ月分の備蓄をしていると計算できます。これだけ備蓄に資金負担がかかります。流動資産が多い分、JXの流動比率は110.6%と高い水準になっているのです。

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