今後焦点となるのは厳しいスタートで始まった今2021年3月期の動向だ。両社とも今期業績の会社予想は開示を見送ったが、6月26日発売の『会社四季報』(2020年3集夏号)では独自予想を掲載している。
前期、JALで総収入の33.7%の4762億円、ANAで同31.0%の6139億円を稼いだ国際線旅客事業は、ほとんどの国との間で入国規制緩和の見通しが立っていない。足元の大幅な旅客減は上期いっぱい続くとみられる。
国際航空運送協会の推計において、世界の国際線需要が2019年と同水準に戻るのは2024年とされる。これを踏まえると下期も国際線の回復は小幅とみていい。同時に海外航空会社から受託する空港業務など、国際線需要に連動する付帯事業の収入も減少することになろう。
ほとんどの事業が大苦戦を強いられる中、唯一の希望は入国規制に左右されない、国内線旅客の早期回復だ。世界には拠点とする国土が狭く、国際線の一本足打法で勝負するエアラインも存在するのに対し、日本は国内の航空需要が旺盛である。前期にJALは総収入の36.4%にあたる5146億円、ANAで同34.4%の6799億円を稼いだ。
同じく国際航空運送協会によれば、国内線需要が2019年の水準に回復するのは2022年と推定される。一方、日本では、緊急事態宣言の解除や都道府県をまたぐ移動の自粛緩和が需要回復を後押している。JALでは6月18日時点で、国内線需要が前年の約20%まで回復した。JALは7月に同40~50%程度へ上昇し、その後も回復基調が続くとみている。
国内線は下期戻るも、通期では巨額赤字
ANAの片野坂真哉社長も6月29日の株主総会で、国内線については「足元で徐々に予約が増えている」と述べ、7月の国内線運航規模をANAブランドで前年の4割程度、グループLCC(格安航空会社)のピーチ・アビエーションではほぼ前年並みまで戻すと説明した。
今年中の実施を目指して国が約1兆3500億円を計上し、クーポン提供などで国内旅行を喚起する「Go To トラベル事業」も企画されている。こうした材料を踏まえると、JALとANAの国内線は、下期にも前期実績に迫る水準へと回復する可能性が高い。
ただし、両社の前期における営業費用のうち6割を固定費とすると、JALで約7800億円、ANAでは約1兆1400億円にも上る。これに燃油代などの運航変動費も乗るため、国際線が通期で、国内線も第1四半期でほぼ売り上げが消滅するという前提を置けば、今期の巨額赤字は免れない。
そのため両社とも各種費用の圧縮を図り、ANAの場合は一時帰休も活用している。大赤字を回避できない現実を受け止め、出血を最小限にとどめるための増収施策とコスト削減を断行できるか。JAL、ANAともに、正念場での底力が試されている。
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