コロナ専門家会議が解散するまでの一部始終

釜萢敏日本医師会常任理事が語る反省と課題

――アメリカで最も早く外出禁止措置を発令したのはカリフォルニア州で3月19日、ニューヨーク州も3月22日に始めました。一方、日本が外出自粛を伴う緊急事態宣言を発動したのは4月7日。アメリカやイギリス、中国、韓国からの入国者の拒否も4月3日からでした。

東京オリンピック・パラリンピックの招致の問題があり、延期が決まった3月24日まで、出入国管理の話題は扱いが微妙だった。専門家会議としてできるだけのことはやってきたが、もっと早く出入国規制に踏み切ることができていれば、感染者は少なくて済んだと思う。

――専門家会議は4月1日に、感染爆発が起こる以前に医療が危機的状況に陥るといったメッセージも出しました。

その前週の3月26日に開催された都道府県医師会および担当理事による連絡協議会で、首都圏の医療が大変な状況になっているとの報告があった。私も東京の感染症指定医療機関の医師などと毎日のようにやり取りをしていて、「病床が空いたとたんに、コロナの患者さんが入ってくる」「入院待機者がこんなにいる」といった切実な情報を得ていた。そうした中で、このままでは入院の受け入れができなくなり、医療崩壊に追い込まれるといった危機感を抱くようになった。

3月28日に専門家会議の非公式の打ち合わせ会が開催されたが、その中で「緊急事態宣言の発動が必要だ」という意見が持ち上がった。そのことを踏まえて3月30日の日医の緊急記者会見で、横倉義武・日本医師会会長(当時)と相談のうえで「緊急事態宣言を出していただいたほうがいい」との発言をした。もちろん、その時には「当然、このことは政府がお決めになることであり、医療だけでなく全体のバランスの中で判断していただくことだ」とは申し上げた。

横倉会長(当時)は強い危機感を持ち、日医は4月1日付けで「医療危機的状況宣言」を出した。ただ、3月30日の日医の緊急会見での私の発言には反省すべき点があった。というのは、「(緊急事態宣言の発動が必要だと)専門家会議のみなさんがそう思っています」などと申し上げたためだ。この発言は勇み足で、後でお詫びした。

PCR検査難民はなぜ生まれたのか?

――東京都や大阪府など7都府県に緊急事態宣言が出されたのは4月7日でした。緊急事態宣言が出されたことによる医療提供体制への影響はどうでしたか。

それまではコロナの患者さんを受け入れる病床の確保が思うように進まなかったが、緊急事態宣言によって医療機関の対応が大きく変わった。一般の患者さんへの医療提供を縮小させ、コロナの患者さんに振り向ける動きが本格化した。

――医療体制の崩壊を回避できた要因として何がありましたか。

医療機関の頑張りが1つの要因だ。もう1つは、人と人との接触を大幅に減らすことについての国民の皆様の理解が得られたことが大きい。これにより新規患者の数が抑制できた。重症者がもう少し増えていたら、医療提供体制はパンクしていたと思う。

――一方で、帰国者・接触者相談センターに相談しても、PCR検査を受けることができないといった問題も深刻化しました。2月17日の事務連絡ではPCR検査を受けるための相談センターへの相談の目安として「37.5℃以上の発熱が4日以上」と明記されています。この記述がハードルとなっているという批判の声があちこちから上がりました。

私自身は医療を提供する側だから、患者さんに「来ないでください」などということはありえない。「受診しないでください」などという通知を出されたのであれば、それに反対するのは当然だ。

日医がPCR検査の受診・相談に関する不適切事案の報告を都道府県医師会に求めたところ、3月13日の締め切り期限までに290件の報告が寄せられた。その内容をつぶさに見たところ、保健所機能が逼迫している実態が明らかになった。検査で陽性者が出ると業務量が急増してとても対応できないという。しかし事務連絡が出された当時、このような問題が起こるとは想像できなかった。

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