コロナ患者を地域で診る「相模原モデル」の苦闘 北里大学病院長に聞く診療体制の難しさ

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相模原医療圏を支える北里大学病院(以下、写真はすべて筆者撮影)
新型コロナウイルス感染症への対応では、感染症指定医療機関などとともに、大学病院が重要な役割を担ってきた。神奈川県相模原市に立地する北里大学病院は、「相模原医療圏」(人口約72万人)で最も重篤な患者を受け入れる中核病院だ。2月以降の感染拡大局面では重症化を防ぐための取り組みが奏功し、すべての患者の治療を終えて退院させた。一方で、コロナ以外の診療の縮小による収支の悪化など、未曾有の事態にも直面した。新型コロナウイルス対応の困難をどう乗り越えてきたのか、岩村正嗣病院長および院内での感染対策を指揮した高山陽子・病院危機管理部感染管理室長にインタビューした。


――クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」でのパンデミックが判明したことから、神奈川県内の医療機関は2月初旬から新型コロナウイルス感染症への対応に迫られました。

岩村 クルーズ船が寄港した横浜市からやや離れていることもあり、当初は緊迫感において横浜市内の医療機関とは温度差があった。ただ、相模原市内の病院で、日本で初めてのクルーズ船の患者の死亡例が出たことから、一気に緊迫感が強まった。当院で最初に受け入れた乗客の方は陽性の疑いだったが、後に陰性だと判明した。その後、感染が判明した数名の患者の入院を受け入れた。

院内感染リスクの最小化に取り組む

――受け入れ態勢をどのように構築しましたか。

岩村 当院では高山室長らの感染管理室が中心となって患者の受け入れ対応をした。他方、災害派遣医療チーム(DMAT)や厚生労働省など、要請する側の窓口がいくつもあり、当初の受け入れは混乱をきわめた。

――未知の感染症ゆえの難しさは。

高山 (武漢で新型ウイルス感染症が判明した)当初は情報が限られていたが、その後、世界保健機関(WHO)やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)からさまざまな知見を得ることができるようになった。飛沫感染や接触感染への対策が何よりも重要であることをスタッフに周知しつつ、1月後半には職員に向けて最新情報を含めた教育セミナーを5回ほど開催した。

岩村 最も気を配ったのが、一般の患者への院内感染を防ぐことだった。大学病院であることから、基礎疾患をお持ちの患者や大きな手術などで免疫力の低下した患者が多い。そうした一般の患者が入院している一般病棟とは別に、コロナの患者を受け入れる場所として(個室の)特別病棟の一角を確保した。

高山 とはいえ、コロナ患者とそうでない患者の動線を完全に分けるのは難しかった。当院は感染症指定医療機関ではなく、感染症専門の病床を持っていない。そのため例えば同じエレベーターを使わざるをえない。そこで時間帯を別にしたり、スタッフ同伴にすることで患者がエレベーターのボタンや手すりをさわったりしないように心がけた。通路も完全に分けることはできないが、注意すれば感染は防げることがわかっていたので、さまざまな工夫をしつつ、コロナ患者にはトイレ付きの個室に入室していただいた。

岩村 コロナ患者を受け入れるための部屋は16室用意した。個室でトイレも設置されていることから、感染を防ぐうえでは管理しやすかった。特別病棟には、救急室からヘリポートに通じるエレベーターがあり、一般病棟の患者は通らない。そうした設備面でのメリットを生かし、院内感染リスクを小さくした。

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