多くの場合、ストーリー中「再起」のタイミングで、主人公は自分にとって何が大事かということに気づきます。「地位とかお金が大事という価値観に振り回されていたのが一番大事なのは家族だと気づく」などの例が挙げられます。「ドラえもん」で言えば、八方ふさがりの状態から、改めて仲間の大切さに気づいて勇気を奮い立たせるようなシーンです。どん底の状況の中で、一番大切なものに気づき成長したりして、そこからクライマックスに向けてぐんぐん上昇していくのです。
よく観察してみると、映画や小説、漫画、ゲームなど、ほとんどの物語は、この「ボトム」→「再起」→「クライマックス」という「V」を描くような流れがストーリーの「核」になっています。このような物語の構造を知るだけでも、自分に起きていること、過去、現在、未来の捉え方が今より少し明確になるかもしれません。
私が言う「ストーリー力」とはそのように「構造を捉える力」がベースになります。さらにいえば、その本質は「変化を捉える力」と言えるかもしれません。
ストーリーの本質は「変化」にあり
ストーリーを作るときにいちばん意識することは「何を変化させるのか」ということです。主人公の成長を表現するのも「できない(失敗する)→できる(成功する)」といった変化を作ります。作品を通じて伝えたいテーマも「その世界がどう変化したか」で表現することを心がけます。何を変化させ、何を変化させなかったのかが、結果的にストーリーを形作っていくことになるのです。
人の感情もまた、この「変化」に結び付いています。例えば、何かカチンとくるような侮辱的な言葉を言われた(外部環境の変化)とします。それが目上の上司や先輩だった場合、すごすごとやり過ごそうとするのに対し、部下や後輩に言われたときは怒りが湧いてきて、言い返したりすることがありますよね。
同じような現象が起きても、その変化が自分でコントロールできる場合は「怒り」の感情が湧いてきてそれに対処する、一方それが自分でコントロールできないようことには「恐れ」などの感情が湧いて逃げるような行動が促されるのです。つまり我々は日々生活する中で、以下のループを繰り返しています。
②脳の中にあるストーリー(予測)と照らし合わせる
③予測と実測の差から感情が生まれ、行動にフィードバックされる
一方で、人が不安になっているときというのは、感情が定まらないときが多いです。どういう感情で整理していいかわからないときほど人は不安になります。それは自分の周りに起こっている変化が明確に位置づけられないからとも言えるでしょう。変化が正確に捉えられれば感情も定まり、行動へとつながるのですが、変化が捉えきれないと不安な状態が続いてしまうのです。
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