「海外ではアリババのECセール『独身の日(ダブルイレブン)』ばかり注目されるけど、中国では当社の618セールも有名なんですよ」
アリババに次ぐ中国2位のEC企業、JD.comの広報担当者が筆者にそう話したのは2年前のことだ。当時、JD.comは「業界2位」から抜け出す戦略の一環として国際広報部署を設立し、海外での知名度向上に取り組んでいた。だがその後も、JD.comが6月に開催する618セールは、アリババのセールに比べると影が薄かった。
2020年、どちらかという地味だった618セールに光を当てたのは、同社の努力ではなく新型コロナウイルス発生だった。618に限らずネットセールはこの数年マンネリ化し、毎年話題づくりに苦心していたが、今年は「アフターコロナの消費回復」をスローガンに、中国全土を挙げたお祭りになっている。
JD.comのふんどしで相撲を取るアリババ
とにかく今年の618セールは話題尽くしなのだが、その中でも象徴的な傾向をいくつか紹介したい。
まず、このセールは本来JD.comのセールだが、今年は4大EC企業(JD.com、アリババ、拼多多、蘇寧易購)が全力で取り組み、中でもいちばん前のめりになっているのがアリババという点だ。
同セールは例年6月1日から18日まで行われるが、アリババが運営するECサイトTモールは今年、セール期間を5月25日から6月20日までと長めに設定。毎日のように盛り上がりを示す数字を公表した。
具体的には、
・16日には、iPhone、iPad、Mac、AirPodsなどアップル製品の半日の取引額が前年同日の1日分を上回った。
・6月12日から始めた「愛家日」(インテリアなどのセールイベント)は、開始1時間で取引額が前年同日の16倍に増えた。
という感じだ。
Tモールは19日、6月18日までの取引額が過去最高の6982億元(10兆6000億円)に達したと発表した。この額は、2019年11月の独身の日セールのTモール取引額の2684億元(約4兆円)を大きく上回る。
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