湯上り美人と猫
浴衣をはだけた女性の足元に子猫がじゃれついているのは、浮世絵師の勝川春英による『湯上り美人と猫図』。眉をそり落とし、お歯黒をしていることから、既婚女性とわかる。女性と猫はよくある取り合わせだが、
「立ち姿の美人と着物の裾にまとわりつく猫の組み合わせは、“見立女三宮図(みたておんなさんのみやず)”といわれ、源氏物語から題材がとられています」と平塚さん。
頭中将の息子の柏木が庭で蹴鞠(けまり)をしていると、猫が家の中から逃げ出してきて御簾(みす)がまくれ上がる。部屋にいた光源氏の妻、女三宮の姿があらわになり、それを目にした柏木は彼女のとりこになってしまう。そして女三宮は柏木の子を産む、というストーリーだ。
「この絵では、猫は御簾ではなく、浴衣の裾をめくり上げています。女三宮を町娘、遊女などに置き換えて、こうした見立図が数多く描かれました。江戸時代後半には源氏物語が庶民にも広まっていたので、絵を見ただけでお話を想像できた人も多かったようです」展示室には数点の肉筆の『見立女三宮図』がそろっている。
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