ともに登壇した練馬区の小学校で教鞭をとる二川佳祐さん(34)も、休校期間の途中から「オンライン朝の会」を始めたひとりだ。対面と非対面のメリットとデメリット、それぞれを感じつつも、
「またいつか自粛しなくてはいけないときがくるかもしれない。その意味でオフラインをベースにすることは限界が来るかもしれない。オンラインとオフラインのハイブリッドを考えたい」
と語る。
具体的には、家にいられる子どもは家からZoomなどでつながる。ネット環境がなかったり、さまざまな理由で学校に来る子は、教室で授業を受ける、といった形だ。
「今回の休校中、もしくはこれからでもICT(情報通信技術)のインフラを整えておくことは、きっと後から価値が出てくる。横のつながりをもちながら、コロナ後もみんなで対話を重ねながら考えていければいいと思う」(二川さん)
「カリスマにしかできない」ではなかった
このセミナーでは、基調講演的な第1部に公立小学校教員が3人、第2部のルーム別の分科会には20数人が登壇した。塾業界でいち早くオンライン化を果たした興味開発型の学習塾「探究学舎」の講師をはじめ文部科学省職員など、子どもの育ちにかかわる専門家が顔をそろえた。無料セミナーのため全員がボランティアだ。
彼らや教員たちからは「みんなで考える」「みんなで広めていこう」といった「みんなで」が、そこここで聞かれた。この、横につながり、束になって教育を変えようとするさまは、以前とは異なる景色だ。
筆者は長く教育の現場を取材してきたが、昭和、平成と長らく、カリスマ教師や塾講師、名物校長ら特定少数の卓越した実践者に活気づけられてきた側面がある。
ところが、今回は“無名の教員”たちが束になって、これだけのムーブメントを生んだ。「カリスマにしかできない」なんてことはないのだ。
コロナ以前からICTを駆使した授業を実践してきた教員の蓑手章吾さん(36)も「これを機にみんなで教育を変えたい」と言う。
蓑手さんが勤務する小金井市立前原小学校は、4年前からプログラミング教育を全国に先駆けて導入。児童一人にPC1台の環境があったため、Zoom導入もスムーズに行えた。一斉休校が決まった夜に子どもとオンラインで繋がり「オンライン朝の会」を開始、多くの教員や教育関係者が見学に訪れた。公立校の中では最もICT教育を知る教員の一人だ。
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