公立でもできた「オンライン授業」の凄い可能性 登校再開で「なかったこと」にしていいのか?

✎ 1〜 ✎ 349 ✎ 350 ✎ 351 ✎ 最新
拡大
縮小

庄子さんは「発想を転換して、こうした問題を乗り越えていけたら」と考えている。

庄子さんの提案は、こうだ。

① 学級開き(再開して1カ月程度の期間)を丁寧に、焦らず進める。学習の遅れを取り戻すことを優先するのではなく、まずは子どもたちのつながりを大切にする
② (多くの時間、教師から一方通行となるオンライン授業では子どもは)ほとんどしゃべれないが、「しゃべらないことを楽しむ」発想でやれないか。例えば、オンライン上で書き込めるホワイトボードで授業をし、子どもたちも考えをどんどん書き込む、など
③ オンラインを活用して、今までの常識にとらわれない「行事」の企画を考えよう

 

画面上のチャットには「そこが気になっていた」とか「いいね」「やってみたい」という声が次々に現れた。

実は庄子さんは休校になる前は、テレビ会議システム「Zoom」を扱ったことさえなかった。使い方を研究し、4月上旬から勤務校で有志の先生に向けて研修。その後「オンライン朝の会」の実施を企画書にして市の教育委員会に提出した。朝の会を学校で行ったときは、教育委員会の職員が見学に来た。市内で徐々に広がりつつある。

現在、東京都や北九州市を筆頭に感染のぶり返しが見られ、“第2波”到来の懸念は消えない。コロナとともに暮らす生活の中、「学校のNew Normal(新しい生活様式)」はどうあるべきなのか。

休校中にわかった、オンラインならではの利点

オンライン授業が「できない理由」は山ほど語られる中、休校中、庄子寛之さんのクラスでは朝の会の参加率はなんと95%を達成した(画像:「6月からの授業のあり方」より)

庄子さんは学校再開後も「オンラインを使っていくべきではないか」と語る。それはこの休校期間中に、オンラインならではの利点をいくつも発見したからだ。

たとえば、教室で一緒にいると、「姿勢がよくないぞ、とか、ほら早くして」となりがちだったのが、画面越しだと「お、いいね、できてるね」と肯定できるなど、つぶさに見えないぶん、過干渉にならずに済んだという。

さらに、オンライン上のチャット機能を使えば、子どもたちは一斉に意思を表示できる。恥ずかしかったり、自信がなくて挙手できないタイプの子どもたちにも、「授業に参加している」という実感を届けられるのだ。

一方の教員にとっても、指導力向上という大きなメリットがあった。朝の会を遠隔サポートすると、同僚教師のよい声掛けや工夫を知ることができた。今後もオンラインで教室をつなぐことができれば、他の先生の授業を見る機会がない小学校ではよい刺激になりそうだ。

ほかにも「オンライン保護者会や、オンライン個人面談もできるのではないか」と提案する。仕事や介護などさまざまな理由で学校に来られない保護者はきっと助かるはずだ。

次ページ練馬区の小学校で教える二川先生の場合は…
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT