公立でもできた「オンライン授業」の凄い可能性 登校再開で「なかったこと」にしていいのか?

✎ 1〜 ✎ 349 ✎ 350 ✎ 351 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
「スクールタクト」を活用して”非同期”も推進する蓑手さんの授業。画像は休校中の生徒のある日の取り組みの様子(画像:「6月からの授業のあり方」より)

その蓑手さんは、「授業を“同期”と“非同期”の2種類で分けて考えてはどうか」と提案する。

パソコン用語でもある「同期」は集団で一斉にやること。教員がホワイトボードで説明するなどオンラインでも可能なものだ。対する「非同期」は、家や地域など、時間も各々バラバラで学ぶ。双方向授業を支援するシステム「スクールタクト」を活用し、自分でやることを決めて、実行したらそれを振り返る。それらをクラスの仲間と共有して進める。自分の好きなときに好きなことを好きなだけ時間をかけられる。プリント学習などもこれにあたる。

スクールタクトを使えば、声を出さずとも密にならないグループ学習が成立する。つまり、同期、非同期の両方でICTは活かされる。

「一斉で受ける同期においても、非同期に耐えうる力をつけていくことが、これからポイントになると思う」

分散登校も含めてコロナと学校が付き合っていく中で、蓑手さんは「ICT活用能力と自立して学ぶ力」が重要になると話す。これは近年叫ばれる教育の「個別最適化」を進めていくうえで欠かせない力だ。子どもたちがタイピングできるようになれば、(密になる)班ごとのグループ学習ができなくても、それをチャットで補えると考える。

「宿題も、クラウドにすればそこにあげておいてくれたら、学校に来たときにできない子は詳しいフィードバックをして救うことができる。まさに、個別最適化です」

中教審で語られたおそろしい「予言」

日本全体としては今後いったいどうなっていくのか。5月26日に中央教育審議会初等中等教育分科会が発表した「新型コロナウイルス感染症に対応した新しい初等中等教育の在り方について」には、何も手を打たないとこんな未来があると警告する言葉が並んでいた。

●ICTの活用が公立で進まず私立などとの格差が拡大し、夏休みなどが削られ普段以上の速さでの詰込み授業と多くの宿題で置いていかれる子どもや不登校などが増加する」
●情報通信インフラが全国の学校現場にようやく整ったときには、コロナ禍は下火。大多数の教員は「ようやく今まで通りの授業ができる!」と喜び、遅れを取り戻すためにも、今まで以上の詰込み一斉授業を展開(対話的な授業や地域社会とつながる学習活動、 探究は感染拡大リスクがまだあるということで、行われず)」
●「やっぱり、長年慣れ親しんだ今まで通りの対面授業が一番!」という大多数の教員と子どもの声。遠隔教育等はコロナ禍限りの臨時的「運用」で終わり、「制度」にならず。
(同発表より一部要約)

 

ちょっと背筋が寒くなる内容だ。

「かわいそうなコロナ時代の学校」ではなく、「コロナで良くなった学校」にできるのか。教員、保護者、自治体等々、子どもにかかわるすべての大人のこれからの行動にかかっている。

島沢 優子 フリーライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

しまざわ ゆうこ / Yuko Simazawa

日本文芸家協会会員。筑波大学卒業後、広告代理店勤務、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。主に週刊誌『AERA』やネットニュースで、スポーツや教育関係等をフィールドに執筆。

著書に『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)など多数。

 

 

 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事