国際標準「伝わる英語」が身に着く意外な近道 平易なのに文章もスピーチもグレードアップ
「ある自動車メーカーが、インドとフィリピンに進出するにあたり、現地向けの文書を平易な英語で翻訳できる会社を探しています。対応できますか」
1998年に私が翻訳会社を設立して間もないころに、このような依頼が飛び込んできました。これが、プレイン・イングリッシュ(Plain English)との出会いでした。
その依頼を受け、プレイン・イングリッシュへの翻訳作業を進める中で、起業前に勤めていた翻訳会社でのシーンが脳裏に浮かびました。
それは、「一語一句、逐次翻訳するべき」という日本人チェッカーと「シンプルでクリアな英語にすべき」というアメリカ人のリライターの間で何度か板挟みになったことでした。「正確な翻訳」(日本語を一語一句漏らさず翻訳する)と読み手に「伝わる翻訳」の間にぼんやりと感じていた乖離は確信に変わり、その溝を埋めるポイントが具体的にイメージできたのです。
その後、アメリカ人翻訳者らとタッグを組み、多くのドキュメントをプレイン・イングリッシュで翻訳する機会をいただき、そのノウハウを蓄積してきました。
『伝わる短い英語』は、そうしたノウハウから生まれました。プレイン・イングリッシュが英米圏で広がっていった歴史、実務に役立つガイドラインやツール、Wordの文章校正機能なども取り上げています。ここでは、広く英語学習者にとってヒントとなる例を紹介します。
二重否定の日本語を肯定形に変えてみる
日本語では「イチローを知らない人はいない」というように、頻繁に否定語を使う文章を見聞きしますし、違和感はありません。しかし、これをThere is no one who doesn’t know Ichiro. と英訳すると、どうでしょう。長くなってしまいますし、わかりにくいです。
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