IHIが実用化を狙う「藻類ジェット燃料」 商業化への大きな期待と高いハードル

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IHI陣営の強みは、原料とする榎本藻の高い生産性にある。神戸大学の榎本平教授が顧問を務めるG&GTが発見・改良した藻で、湖などに生息する「ボツリオコッカス」の一種だ。ボツリオコッカスは二酸化炭素を吸収して油を産出し、細胞周辺に溜め込む。榎本藻は1カ月で通常のボツリオコッカスの1000倍にまで増える“高速増殖型”で、繁殖スピードが早い分、より多くの油を効率よく作り出せる。

ターゲットとする用途は航空機用のジェット燃料。自動車はガソリンに代わる動力・燃料として電気や水素が本命視されるのに対して、航空機用燃料は代替候補が限られるうえ、旅客機の就航数増加で今後も燃料需要の拡大が確実視されるからだ。

ワクチン製造に続く新規事業

IHIは航空機エンジンや発電所用大型ボイラー、各種プラント設備などを主力事業とする総合重機メーカーの大手。その同社が、まったく畑違いのバイオ燃料に挑戦するのはなぜか。

国内の経済・産業の成熟化により、総合重機メーカーは売上高の成長が止まって久しい。このため、IHIは2006年に新事業を担う専門の部署を設立。まず第1弾として、バイオ医薬品ベンチャーのUMNファーマと合弁会社を立ち上げ、インフルエンザワクチン原薬の製造事業へ参入した。それに続く新事業の第2弾が藻類バイオ燃料だ。

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培養した藻をすくい上げて解説する、ネオ・モルガン研究所の藤田社長

同社の成清勉・新事業推進部バイオプロジェクトグループ担当部長によると、「エネルギー分野の有力候補として、藻類バイオ燃料の将来性には早くから注目していた」という。

経済合理性の観点からいったんは時期尚早と判断したが、その後、G&GTが高速増殖型の榎本藻を開発。ネオ・モルガン研究所の藤田朋宏社長を通じてIHIに商業化の打診があり、3社共同でプロジェクトを立ち上げた。

まず力を注いだのが、品種改良だった。育種を得意とするネオ・モルガン研究所が、IHIからの要望に応える形で品種を改良。たとえば、数多くの藻が塊となって生育するようにしたり、藻から排出されるヌメリ成分を減らすなどの改良を行った。水中からの回収のしやすさや、培養水のリサイクル費用を考えてのことだ。

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