過熱するバイオ素材投資、欧米勢は積極攻勢も、逡巡する日系大手
11月上旬。日本の総合商社2社が「バイオコハク酸」と呼ばれる植物から取り出す素材で、海外企業と相次ぎ提携した。
三井物産は、カナダのバイオアンバー社と組み、2013年をメドに量産に乗り出す。双日は米ミリアント社と販売・製造で戦略提携した。
「植物を資源として活用する流れは避けて通れない」。三井物産スペシャリティケミカル事業部の幹部は力説する。2陣営がもくろむのは「バイオ素材」の普及だ。
拡大する世界市場 国内はコスト高が壁
バイオコハク酸は最終的にはプラスチック(合成樹脂)などの化学品に加工される。こうしたバイオ素材の原料はバイオコハク酸のほか、ポリ乳酸などさまざまで、植物を発酵・分離精製して抽出する。エチレンなど、石化製品の原料と同じ属性の素材を精製できる場合もある。
化学品は現在、石油や天然ガス系原料を使うのが主流。一方、生育過程でCO2(二酸化炭素)を吸収し、持続的に収穫できる植物を使うバイオ素材は、将来の資源不足や地球温暖化問題に対応する有望な事業だ。
日本では、三菱化学や三井化学、帝人などが、それぞれの得意分野に関連したバイオ素材の技術・製品開発や市場開拓などを進めている。
調査会社の富士経済は、バイオ素材の代表格といえるバイオ樹脂(バイオマスプラスチック)の世界市場が昨年、約570億円に達したと推定。15年には約1700億円まで拡大すると予測する。石化製品に比べまだ規模は小さいが、将来、一定の地位を占める可能性は低くない。