過熱するバイオ素材投資、欧米勢は積極攻勢も、逡巡する日系大手

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原料押さえる欧米勢 新興国取り込みに先手

そして舞台は次の勝負に移りつつある。欧米勢はバイオ素材で川上の原料を押さえ、さらに新興国市場の開拓も見据え始めているのだ。

三井物産が今年7月、ブラジルにおけるサトウキビ農園の運営から、バイオ素材の生産までを一貫するビジネスで手を組んだのもダウ。2社は、15年に年産35万トン規模のバイオ素材工場を稼働する計画である。

昨今は中東の産油国ですら、自国近辺で石化製品の製造まで手掛ける時代。三井物産とダウのブラジルにおける合弁事業も、地産地消によるコスト競争力の確保が狙いにある。

米デュポンは近年、農作物の種子開発会社や発酵技術を持った企業を次々に買収した。「原料から製品までを一貫する体制を構築するとともに、グループで研究開発費の3分の2をバイオに投入している」と、バイオビジネスを統括するインダストリアル事業部門のジェームズ・C・コリンズプレジデントは強調する。海外メーカーは化石資源の枯渇をにらみ、着々と布石を打っている。

日本勢では、三菱化学が20年に化学品原料の20%を植物化する目標を設定。15年にはタイのPTT社と組みバイオ素材の量産を始める。また上流工程まで踏み込んだ、バイオ系原料の事業化も検討中だ。

だが、三菱化学以外に植物原料にまで手を伸ばそうとする日本の素材大手はまだ見当たらない。現在や数年後を支える事業への投資に手いっぱいで、10~20年単位の将来を見据えた次世代の種まきに、大胆な手を打てていないのが実態である。

日本の素材大手は技術力には優れるが、売上高数兆円の巨大企業が目立つ欧米の列強に比べると、規模の面で見劣りする。国家的な産業政策の後押しもない。ここに日本が抱える弱点が見え隠れしている。

(武政秀明 =週刊東洋経済2011年12月3日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

写真:デュポン(株)提供
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