過熱するバイオ素材投資、欧米勢は積極攻勢も、逡巡する日系大手
次代を担う夢の素材──。だが、日本勢の現状はそう甘くない。
昨年、日本国内向けに売れたバイオ樹脂はわずか8億円強(富士経済調べ)。15年に80億円を超える見通しだが、普及はもたついている。
最大の壁はコストだ。直近ではトヨタ自動車が10月にハイブリッド車「SAI」の一部改良に合わせ、シート表皮などに採用したバイオ樹脂のコストを石化製品と同等に引き下げたが、これはまだ例外的な事例。一般的には「石化系と少なくとも数倍以上の差がある」と富士経済東京マーケティング本部の杉本智志氏は指摘する。
「数年前は、バイオ素材というだけで採用する日系企業もあったが、今は石化製品と性能を明らかに差別化するか、コストを同等以下にしないと見向きもされない」。三菱化学の藤原英幸・石化開発部門長は厳しい現実を語る。日本の素材大手には、主戦場である国内市場の伸び悩みが普及のネックになっている。
バイオ素材の世界市場を牽引するのは欧米。独BASF、米ダウ・ケミカル、米デュポンなど欧米の素材大手やバイオベンチャーが主役だ。欧米にはバイオ素材やバイオ燃料に関する各種の法整備など、日本では脆弱である国家レベルの普及促進策があり、恩恵を受けている。