IHIが実用化を狙う「藻類ジェット燃料」 商業化への大きな期待と高いハードル
こうした室内での品種改良と培養試験を経て、昨年には屋外で大量培養試験を実施した。5月から11月までの半年間、IHI横浜事業所の敷地内に約100平方メートルのプール型試験プラントを設置し、その中で大量の榎本藻を培養。「雨や風、雑菌などにさらされた屋外の環境下でも、藻を安定的に増殖させられることが確認できた」(ネオ・モルガン研究所の藤田社長)。
高いコストの壁
今年も横浜事業所で同様の屋外試験を実施し、改良を加えた品種や設備の成果を確認する。その検証結果を踏まえて、2015年には数十億円の費用を投じ、まずは国内に数千平方メートル規模のパイロットプラントを建設する予定。商業化時の栽培場所としては、藻の生育に適した気候条件(日照時間が長く、気温30度程度)や土地代の安さなどから、豪州や東南アジアが候補に挙がっている。
しかし、商業化まで漕ぎつけるには、克服すべき大きな課題がある。コストの問題だ。IHI NeoGによると、現段階の技術を前提とした場合、大量栽培しても燃料1リットル当たり500円前後の生産コストがかかる、という。藻の栽培には大量の水を使用するため、その関連処理費用がかさむ。排水一つをとっても、投与する栄養分に含まれる窒素やリン酸などの除去が必要だ。
いくら藻類バイオ燃料が環境に優しくとも、価格が高ければ普及は進まない。「商業化するには、もっとコストを下げる必要がある。目安としては、(現在のジェット燃料に対抗できる)1リットル100円前後の実現が至上命題と考えている」(IHIの成清氏)。
その実現に向け、IHI陣営は藻の品種改良を進める一方で、作業をシンプルにして自動化を促進するためのさまざまなアイデアを検討。さらに、米国や南米の穀物栽培のように、藻の栽培面積を数千ヘクタール規模にまで大規模化して、スケールメリットで単位面積当たりの生産コストを下げる考えだ。
化石燃料の石油に代わる、夢のクリーン燃料として期待される藻類バイオ燃料。はたして、3社による商業化の構想は実現できるのか、それとも、夢で終わってしまうのか。すべてはコストの問題を乗り越えられるかどうかにかかっている。
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