コンテンツはAKBのように"顔"で売るべし ディズニーとニコニコが組むと、こうなった(3)
――「海賊版のほうがサービスがいい」とは?
川上 「着うた」で実際に高校生にヒアリングした結果、わかったことなんです。ちょっと昔の話になりますが、着うたって曲の一部分だけじゃないですか。「本当はイントロの着うたが欲しい」というユーザーがいるわけですよ。あとは、ビットレートというのがあって、「売られているものより音質をよくしてほしい」とか。携帯電話の性能的にはもっといいのがあるんだけれども、売っているものだと、そうではないんですよね。
それで、品ぞろえもいい、音もいい海賊版が出回ってしまうんですよ。さらにコピーもできる。携帯を換えても使える。そうすると、商品として着うたを、音楽を本当に愛する人だったら、それは当然海賊版使うだろう、と(笑)。
塚越 顧客満足度という点で(正規版の業者が)負けているんですよ。
――海賊版はお客さんに受け入れられようと、自分たちで進化していった?
川上 進化したというより、制限がないんですから。違法コピーしているんだから、そりゃあ勝てないですよね。音楽が好きな人は海賊版を使うんですよ。音楽は別にそれほど好きではなくて、あまり興味もないという、音楽のことなんて「どうでもいいや」と思っている人が、100円ぐらいだったら、と思って着うたの正規版を買うんです。
正規版を買うユーザーは、音楽をそれほど愛してもいないし、タダで手に入る方法もよく知らない「情弱(じょうじゃく)」と呼ばれる、情報弱者。それで、高校生にヒアリングすると、そういう価値観なんですよ。これホントにそうなんですよ。
海賊版のアニメは字幕付きで超便利

――高校生は情報強者なんですね。
川上 そうそう。ちゃんと音楽を愛する人は、だいたい海賊版を使うんです(笑)。
塚越 これは皮肉。考え直さないといけないでしょ?コピーの管理の話とは別。だから僕らは、どんどん見られるような便利な正規品を作っていきたい。
川上 これに似たようなことが映画でも起こっているんです、世界各国で。少し違う視点ですが、日本のアニメは海外で勝手にコピーされているけれど、海外のは勝手に字幕とか付けているんですよね。
――そういう動画をネットで見たことがあります。
川上 超便利じゃないですか。それを止めろと言っても、日本語のものを正規版で日本から輸入して買うという方法はあるかもしれないけど、字幕の付いたものは現地で売っていないわけですよ。世界の人にとってみたら、(日本のアニメを現地語の字幕付きで)見ようと思ったら、海賊版しかない。そういう現象が、現実に起こっている。今でも、デジタル化されてないようなコンテンツがいっぱいありますから。