小室:これは絶対聞きたいと思っていることがあるのですが、男性育休の取得率は全国平均で6%といった状況の中で、大和証券は100%ですよね!? これはいったいどうやって実現したんですか?
中田:19時前退社の導入と一緒で、最初はある程度強制的にやらないと駄目ですね。男性は同調圧力に弱いですから、取っても取らなくてもいい休業を取ることで、周囲からどう思われるかと躊躇します。弊社のワーク・ライフ・バランス委員会では、退社時間はもとより、育休取得率などすべてのデータを可視化しており、職場の上司に声掛けを続けてきました。
おかげさまで、もう強制力を発動しなくても男性育休100%を実現できるようになったので、現在は育休期間を追求する段階に移行しつつあります。今は取得期間の平均が8日なのですが、平均で8日ということは1日や2日という社員も多いはずなのです。なので全員原則1週間以上にしようと決めました。
小室:妻が産後うつになるピークは産後2週間のところです。産後5日間は入院していますから、退院してから1週間以上必ず夫が休業を取って自宅にいてくれるということは、本当に心強いですね。
中田:そうすると、当然平均値も上がりますし、自然発生的に「もうちょっと取ってみよう」という動きも出てくるはずです。最終ゴールを2週間以上とするための第一ステップに踏み出したという感じですね。
小室:仕事の繁忙期と重なっているからと、いつまでも育休に入れない男性も多いですね。
中田:そこは思い切って川を渡らなければいけないポイントだと思っています。極論を言えば、社長の私が明日からいなくなっても、絶対に会社は回るはず。つまり、2週間や1カ月連絡が取れないことで、何かとてつもない事態が起きるかといえば、実際は起きないんです。起きるんじゃないかと心配してる自分がいるだけ。
小室:むしろ「起きてほしい」とすら思っているんですよね(笑)。自分の存在意義を、そういったところで確認してしまう。普段から属人化した仕事の仕方をしている人も多いと思います。
自動的に休んでも全然仕事は困らない
中田:お子さんが生まれたら自動的に2週間なり1カ月なり休むようにしても、全然仕事は困らないし、そのためにチームがあるわけです。テレワークも活用できるわけですから、今後育休は取りやすい時代になっていくと思います。
小室:仕事が属人化していて、チーム制になってない企業は、仕事を見える化・共有化・チーム化して、自分がいなくても回る状態をつくる。もう一方で、政府の側は、休んでいる期間にもテレワークなどを活用してスポット的に働きやすい状態へと法律の縛りを緩くする。こういった動きが両側から進めば、クリアできる問題だと思います。
中田:仕事の見える化・共有化は、リスク管理上も必要です。特にリテール部門は、お客様と1対1の信頼関係が重要ですが、仕事を見える化・チーム化することで、コンプライアンス上のリスク管理も強化されていくと思いますね。
小室:同感です。頻繁な転勤でリスク管理をする企業が多かったと思いますが、わざわざ転勤までさせなくても、普段から見える化すればいいんですよね。
コロナも一つのきっかけとなって、本来見直されるべきなのに、残ってしまっていた商習慣は一気に見直されていくと思います。転勤・残業・出張・ハンコ・多すぎる対面会議・過剰品質な社内外資料・毎日の通勤(と煩雑な交通費精算)・紙資料など。経営に余裕が無くなったら、真っ先に見直すべきものばかりですので、大変動するでしょう。
(構成:アスラン編集スタジオ 渡辺稔大)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら