なぜ日銀はインフレ2%実現を曖昧にするのか 日本の「金融財政政策」はかなり見劣りする

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両国の財政金融政策の対応の差は、これまでの株式市場のパフォーマンスに現れている。4月末時点の年初来株価下落率は、S&P500がマイナス10%、TOPIX(東証株価指数)がマイナス15%となっている。筆者は、現在のアメリカ株市場は経済活動のスムーズな再開への期待を背景に市場心理がやや楽観方向に傾いていると警戒している。ただ、大規模な財政金融政策で経済の落ち込みをできるだけ和らげ、今後スムーズに経済再開を実現させる観点では、先進国の中ではアメリカが最も期待できるだろう。

株式市場の中ではアメリカ株が相対的に有望

これは欧州との対比でも同様である。同時点の欧州株(Stoxx欧州600指数)の年初来下落率は約マイナス19%と、日本株にも劣後している。

欧州株の下落率が大きいのは、新型コロナ禍の被害が日本より大きいことに加えて、各国の財政政策が十分かつスムーズに発動されないことが大きく影響していよう。ユーロシステムを維持する限り、各国政府が柔軟かつ大規模に財政政策を発動できないことが制約になっているわけだ。

現在の欧州の金融市場の最大のテーマは、国債金利上昇に直面しているイタリアが大規模な国債発行を伴う財政政策を打ち出せる仕組みに関して、ユーロ各国が合意できるか否かである。イタリアによる財政拡大の使い道を制限する政治勢力の存在が、3月以降の同国の国債金利上昇の要因になっているとみられる。

今後の世界の株式市場の行方は、ロックダウン(都市封鎖)を和らげ経済活動がスムーズに再開するかが最大のポイントである。

先述の通り、筆者はこの点については、現在の株式市場は楽観方向に傾いていると慎重に考えている。そして、各国の経済再開のスピード、そして1年先の株価パフォーマンスは、感染拡大に歯止めをかける公衆衛生政策の徹底、それと整合的で大規模な財政政策を打ち出すか否かが決定的に影響する。

これまでの政策対応を踏まえると、筆者は株式市場の中ではアメリカ株が相対的には有望と考えている。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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