現行の政策枠組みを続ける限り、日銀の金融政策運営は、政府の財政政策で既定される国債発行残高に今後もかなりの程度依存する。
筆者は、政府と一体となった財政拡大を通じて金融緩和を強化してデフレリスクを軽減することが、現在日銀が最も注力すべき政策対応と考えている。
このため、日銀が2%インフレ実現にコミットするなら、政府による財政政策発動を後押しする行動が必要になる。今回、展望レポートで示されたボードメンバーの見通しでは、2%インフレは2022年度までに実現しないとされている。新型コロナ禍によって2020年度に大幅なマイナス成長が予想されている中で、現実的な想定である。
政府による即効性ある財政支出は合計16兆円に
一方、予想される経済ショックを踏まえ、2%インフレ実現に必要となる大規模な拡張財政と一体となった金融緩和強化が必要との分析を、日銀がはっきり示すことは可能だろう。2%インフレのコミットを曖昧にして現行の政策枠組みに安住し、資金供給拡大を通じた自らの銀行機能強化のみに行動が限定されている、と日銀の対応に筆者はやや不満を感じている。
現在、政府が補正予算で策定している財政政策のうち、一人当たり10万円支給(約12兆円)、企業への資金支援(約2兆円)、医療体制拡充などの歳出拡大(約2兆円)の合計約16兆円(GDP比3%相当)が、即効性のある財政支出と試算される。この分は、足元の日本経済の急速な落ち込みを、ある程度和らげるだろう。
だが、アメリカ政府は、家計への現金給付や中小企業を通じた給与肩代わりなどの家計の所得保障政策を中心に、GDP7%以上の規模で即効性がある財政政策を発動している。これと比べると、日本の財政政策はかなり見劣りしていると筆者はみている。
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