東京電力でコロナ感染者はなぜ多発したのか 合計22人の感染が判明、電力供給に不安も

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櫻井市長の指摘を踏まえ、柏崎刈羽原発では急きょ、再稼働に向けて進めている安全対策工事の8割(件数ベース)の中断を決めた。同時に、小早川社長名でグループ各社の社員宛てに「対策の強化のお願い」と題する文書を出した。

現在、もっとも懸念されているのが、電力供給の生命線である発電所の中央制御室や送配電子会社の中央給電指令所の運転員らに感染が広がる事態だ。運転員は交代勤務制となっているが、機器に精通した運転員の人数は限られており、万が一感染が発生すると、チームごと業務から離脱せざるをえなくなる可能性がある。

医療体制は十分だったのか

現時点でそうした重要業務を担う職員の感染は確認されていないものの、柏崎刈羽原発構内で2人の社員(広報および防災業務担当)の感染が確認されたことは、東電社内のみならず、立地自治体にも衝撃を与えている。

東電は、原発の中央制御室の天井の耐震化など一部の重要な工事を除き、柏崎刈羽原発構内で8割に相当する工事の中断を決めた。これに伴い、原発構内で働いていた約4000人の協力企業の作業員のうち約2700人が、ゴールデンウィーク明けの5月10日まで自宅や寮で待機することになった。

社員に対する東電の医療サポート体制も十分とは言えなかった。東電はこれまで、社員に体調把握のためのチェックシートを配布し、37.5℃以上の発熱や咳などの症状の有無を上司を通じて報告させていた。体調不良が見られる場合、本人がかかりつけの医療機関を受診するのが通例だった。

だが、体調不良が続いていたにもかかわらず、新型コロナウイルスの感染有無を判定するためのPCR検査を受けられないまま日数が経過する事例があった。

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