経理部は「完全リモートワークで決算」できるか マネーフォワード経理部隊が挑んだ高い壁

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マネーフォワード財務経理本部の担当者がビデオ会議ツール「Zoom」上で、資料の画面を共有しながらミーティングをしている様子(画像:マネーフォワード)

請求書や領収書、契約書などの紙の書類があふれ、押印待ちの列を成す――。

企業の経理担当者の仕事は、まだまだアナログなものが少なくない。そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くの企業がリモートワーク(在宅勤務)を余儀なくされている。決算や監査の業務が遅れ、決算発表を延期する企業も後を絶たない。

日本CFO協会が4月7日の緊急事態宣言発令後に行った調査によれば、新型コロナウイルスにより懸念されるリスクについて、約200人のCFO(最高財務責任者)や経理・財務担当幹部のうち、最も多い55%が「決算業務の遅延」を挙げた。また実際の業績への影響に関する複数の項目に次ぎ、5番目には「業績発表の遅延」(32%)も並ぶ。

2週間、完全リモートで決算業務

そんな中、完全リモートワークで決算業務を行い、通常のスケジュール通りに四半期決算の発表にこぎ着けた企業がある。法人向けクラウド会計ソフトや個人向け家計簿アプリを手がけるマネーフォワードだ。年間の決算の締めが11月の同社は、第1四半期決算を緊急事態宣言発令後の4月14日に発表している。

マネーフォワードが全社にリモートワークを推奨し始めたのが3月2日。ちょうど2月の月次決算と、年度の第1四半期決算の締め業務が始まった頃だ。そこから約2週間にわたって、同社の財務経理本部は完全リモートワークで決算業務を乗り切った。

そもそも決算にかかわるシステムは、営業の案件管理や請求書、債権の管理、経費精算、財務会計、管理会計、連結決算、税務申告に至るまで、すべて自社サービスを含めたクラウドソフトで構築していた。そのためシステムにアクセスするために出社する必要がなかった。

ただ松岡俊・財務経理本部長は、「特に請求書の回収など支払い業務を乗り切れるかが課題だった」と振り返る。クラウド会計ソフトを手がけるマネーフォワードでも、ほんの数ヶ月前までは紙の請求書に承認者がハンコを押したり、手で書き込みをするといったやり方が残っていたという。

だが直近では自社サービスの「マネーフォワードクラウド経費」の活用を進め、支払い業務のプロセスはすべて電子化した。「銀行への振り込みもクラウドソフトとシステム連携をしていれば、ボタン1つで完了する。以前だとその過程でも押印のための出社が必要だった」(松岡氏)。

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