企業がテレワークでの就労にも対応した組織づくりを行うに当たっては、テレワークがどのような変化をもたらすのか、定量的なデータを参照にするべきだ。具体的にテレワークを行っている従業員に対象者を絞って、意識や就業実態の影響を見ると、下のような結果となった。
テレワーク前後の変化を聴取したところ、上司、同僚とのやり取りについて「減った」という回答が極めて多い。新型コロナで急にテレワークを行うことになって労働時間、業務量そのものも減っているため、テレワークによって労働密度・交流頻度ともに薄くなっていることがわかる。
組織への一体感や仕事への意欲・やる気が低下
結果、組織への一体感や仕事への意欲・やる気が低下したと答えた割合がそれぞれ30%以上に上っている。反対に「上昇した」はそれぞれわずか3.8%、5.6%にすぎない。感染拡大を防ぐ目的のためとはいえ、組織のコンディションとしては、かなりネガティブな影響が際立つ結果となっている。企業としても、長期にわたるテレワークによって、組織と日々の業務に深刻なダメージを与えかねないことに注意を払うべきだ。
急づくりのテレワークとはいえ、なぜここまで悪い影響がでるのだろうか。実は、テレワークで表面化している組織や業務への弊害の多くは、これまで日本でテレワークが進んでこなかった理由と表裏一体だ。
そもそも日本の伝統的な雇用のあり方は、ことごとくテレワークと相性が悪い。現在のような急なテレワークでは、そうした相性の悪さによる弊害のほうが表に出やすい。それを整理すると次のとおりとなる。日本における雇用の特徴の観点から、企業が注意すべき弊害について「職務範囲」「業務」「評価の育成」というそれぞれの視点から見ていこう。
まず職務範囲だが、日本はそれが曖昧になっていることが多い。日本企業の人事管理は、欧米諸国と比べ、従業員が担う仕事の範囲を曖昧にすることによって組織変更や異動配置のフレキシビリティを確保してきたからだ。
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