嶋:お店の人からすると、人も呼べるし、手間もかからない絶妙な施策だったわけですね。コマース機能も持つ「ワタシプラス」に誘導するという点でお店側と競合してしまうところに反発はありませんでしたか?
渡辺:おっしゃるとおりデパートやチェーンストアも含めて、我々が「ワタシプラス」を展開していることについては、いろいろご意見があるんです。ですから「ワタシプラス」を絡めて、店頭とお客様をつなぐキャンペーンをつくりたいという思いがありました。仮に「ワタシプラス」の会員になっていただかなくても、コミュニケーションはとることはできるので。最終的には紙兎ロペのキャラクターも含め、「面白そうだから資生堂さんに付き合ってあげるよ」と思ってもらえたことが、警戒心を突破できた要因だと思っています。
熊坂:「ワタシプラス」にとっても、オンライン上だけでなく、リアルの場で商品に接してもらうことは、アクティブなお客様との出会いをもつことができると思っています。
組織を越境する仕事術
嶋:紙兎ロペのキャンペーンは、広告を打つだけでなく、店頭からウェブへの誘導、そしてプレゼントの発送までの流れがあり、それぞれ異なるタッチポイントでの露出をコントロールするブランディングも必要になります。さまざまな要素を有機的に結びつけなければいけないわけですよね。これは社内のさまざまな部署と一緒にやらなきゃいけない。通すのが大変だったのでは?
渡辺:確かに熊坂からこの企画を聞いた時は、通すのは難しいなと思いました。ただ、新規部門なので、端からみれば何をしているか分からないところもあり、関連部門には逐一活動を報告していたのです。
熊坂:今回は「オフラインtoオンライン」の施策なんですけど、正確に表現すると「オンエアtoオフラインtoオンライン」の「O2O2O」なんですね。キャンペーンのプロモーションにウェブ広告やワタシプラスのLINE、資生堂のfacebook,YouTubeなどを利用していますから。さまざまなスキームで社内のマーケティング構造を取り込まなければいけないので、ウェブ部門や宣伝部門など、あらゆる事業と接続する必要がありました。
嶋:まさに聞きたかったのはその部分なんです。私自身も統合キャンペーンを多数手がけてきましたが、会社全体を串刺しにしていくのが一番体力使いますよね。
熊坂:お客様の購買行動がシームレス化している以上は、社内のセクショナリズムも取り払って、我々もシームレス化していかないと市場のスピードにはついていけません。そういうことを社内に沁み込ませるために、今回のキャンペーンはいいきっかけになると思いましたので、どんなことがあってもやり切るという強い意志でやりました。
渡辺:「ワタシプラス」が立ち上がり、もうワンステップ飛躍するために、ドラッグストアなどを担当する流通開発部門の我々のチームができたのですが、発足から一年間、右往左往しながら動いてきました。私は営業のサポート部門にいた人間ですし、熊坂はもともとマーケティング部門、その他、なかにはPOSデータを解析する専門の人間までいる寄せ集め部隊です。我々のミッションを果たすにはオフラインのことも、オンラインのことも両方見なければいけない一方、ブランドはメーカーとしての生命線なのでそこも大切にしなければいけない。その部分を取り持つチームとして有機的に動くことを会社から要求されているわけですし。
熊坂:マーケティング部門も宣伝部門も「なんで流通開発部が?」とオーバーラップされた感じは受けたと思うんですよね。オフラインとオンラインを使って、どのようにお客様の購買導線を快適なものにできるか。まずは、とにかく社内を巻き込んでいって、「こういうことか!」と実感してもらう必要がある。言葉で説明しても、理屈ではなかなか動かせませんから。
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