O2Oで大活躍、資生堂の”あのウサギ”
マジっすか?流通エースが仕掛けたドラッグストア戦略

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対面販売からネット戦略へ 資生堂のこれから

2013年に新事業で発足したトレードマーケテインググループに所属する熊坂友貴さん

:そうなると、大変なのは次の仕事ですよね。

熊坂:そう。大事なのは二つ目。「あのパターンか」と社内にも社外にも定着させていかなければいけません。先ほど、「流通リテラシー」というお話をしましたが、ちゃんと会社全体のマーケティング構造の中に埋め込んでいかなければならない。すでにある会社のマーケティングに我々がO2Oの施策をつけ足すのではなく、ブランドをつくっていく際の発想に初めから組み込まれていなければ、お客様の買い物を快適にすることはできないんです。

渡辺:実際に商品の売り上げが20倍に跳ね上がった例も、今回のキャンペーンでつくれました。我々の「ワタシプラス」にお客様を囲い込むことが目的ではなくて、あくまでお客様に店頭まで足を運んでいただくための施策だということも、もっと浸透させていきたいですね。お客様が店頭にいくという行為自体に、感情的な価値がありますから。とにかく、お客様のコンフォートを高めていくこと。そのきっかけが資生堂であればいいと思っています。

:もしかしたら、資生堂の商品を買わないかもしれないけれど、お店への導線をつくることができるメーカーとして店舗から信頼されるということが大切なんですね。そういえば、電通さんと店頭専門会社をつくられているということなんですが、どんな業務をされているんですか?

渡辺:2013年7月に電通リテールマーケティングさんと共同で立ち上げた、店頭メンテナンス機能を担う「ジャパン リテール イノベーション(JRI)」です。なにをしているかというと、我々がプロモーションを打った時に、商品やPOPを店頭にしっかり陳列したり、データベースを活用しながら、お客様や流通視点に立って店頭の見せ方を提案したりする会社です。

:JRIで店頭での展開を担保して、ロペのような空中戦も仕掛けていく。集客で店頭の売り上げにもつながる。ウェブと店頭が競合するのではなく、うまく相乗効果を生んでいるといえそうです。最後に今後の抱負を聞かせてください。

熊坂:とにかく、お客様が快適になれるかどうかにこだわりたい。快適なくして最終的な購買決定には結び付きませんから。そのために、どんどんいろんなメーカーのキャンペーンやマーケティングに自分自身が接触しながら、感覚を蓄積していきたいです。

渡辺:資生堂がかつて強かった時代には、お客様からの支持がありました。メーカーですので商品力が基本だとは思いますが、そのうえでこれからはどれだけ接点を増やすかが重要です。となると、我々が取り組んでいるO2Oはひとつのキーになっていくと思います。会社の中でもコンセンサスをとりながら「昨日より一歩前に進む」という日々を心掛けたいですね。最近ではLINEのグループに入れられてどんどんメッセージが飛んできます(笑)。

熊坂:渡辺さんには嫌がられるかもしれないけれど、アイデアを思いついたらすぐにメッセージするようにしています(笑)。

:すごく、いまっぽい共有のしかたですね。本日はありがとうございました。

 

資生堂本社内で行われた対談。左は聞き手の嶋浩一郎

 ※株式会社 ジャパン リテール イノベーション
国内化粧品市場の競争が激化する中低価格品の販路として大きなウエイトを占める組織小売業への対応を強化するために、2013年7月に設立された新会社。資生堂と電通リテールマーケティングが共同で出資した。組織小売業に関するデータベースの分析や編集に加え、店頭メンテナンスのノウハウを有し、店頭への情報提供や店頭メンテナンス業務をローコストで実行することを目的としている。

(構成:宮崎智之)

 

嶋 浩一郎 博報堂ケトル共同CEO

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しま こういちろう

博報堂ケトル共同CEO・クリエイティブディレクター・編集者
上智大学法学部卒業後、93年博報堂に入社、コーポレートコミュニケーション局に配属。企業やブランドのPR・情報戦略に携わる。01年朝日新聞社に出向、「SEVEN」編集ディレクター。02年から04年博報堂刊「広告」編集長。本屋大賞の立ち上げに参画。06年既存の広告手法にとらわれないクリエイティブエージェンシー博報堂ケトル設立。カルチャー誌「ケトル」の編集長もつとめる。
主な仕事:KDDI、J-WAVEなど。主な著書『嶋浩一郎のアイデアのつくり方』など

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