「化粧落としが面倒」、女性の実感がヒット商品を生む
資生堂の川上登美子さんは、東京大学農学部大学院を修了したリケジョ。昨年、同社の大ヒット商品を生み出した。お湯だけで化粧を落とせる化粧下地「フルメーク ウォッシャブル ベース」だ。年間数十万個でヒットといわれる化粧下地の市場で、2013年2月の店頭販売から2カ月で200万個の出荷数を記録した。
といっても普段、化粧をしない男性には、何がそんなに画期的なのか、わからないだろう。
夜、化粧を落とす。これがどうしようもなく面倒なときが女性にはある。1日働いてクタクタになった日。お酒を飲んで帰った日。落とさないまま寝たら肌に悪いという葛藤と戦い、重い腰を上げて洗面所に行き、クリームを塗ったり、オイルでふき取ったり、濃いアイメークには専用のリムーバーを使ったり……。
こうしたクレンジングの煩わしさは、化粧をする女性なら誰しも感じているはずだ。川上さんもそのひとりだった。
「家に帰ると急にスイッチが切れてしまう。このままシャワーを浴びてお湯で一緒に化粧を洗い流せたら、どんなにラクだろう」
この下地は、40度でやわらかくなるセンサー分子が入っているのが特長だ。お湯で洗うと、その上に重ねた化粧が浮き上がって落ちる。体温に近い37度以下では化粧崩れしやすいが、かといって42度では熱すぎてしっかり洗えない。
ぬるすぎず、飛びのくほど熱すぎない。それでいて結果をきっちり出す絶妙なバランスの温度は、川上さんの「女前」な情熱と似ている。
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