研究職からマーケティングへの異動は複雑だった
2005年に研究職として入社した川上さんは6年半、基礎化粧品に紫外線カット効果を施す処方の研究開発をしていた。2010年12月、マーケティング部門へ異動する。上司に異動の打診をされたときの気持ちは複雑だった。
「研究者としてのキャリアを考えると、一度、中断したら、いつか研究職に戻ったとしても、研究一筋の人たちにはかなわない。トップランナーにはなりえないのです。それまで私はいろいろな研究発表もしてきて、手掛けているプロジェクトもあったので、後ろ髪を引かれる思いでした。でも最終的には、なかなかない機会だし、お声をかけていただいたことに懸けてみようと思いました」
この懸けが、2年後に大ヒット商品を誕生させる。2011年1月、異動の2カ月後に社内でアイデアコンテストがあり、「お湯で化粧を落とせる下地」を提案したのだ。このアイデアのユニークさは、クレンジングの工程そのものを省いたこと。女性としての実感と、研究者としての「作れるはず」というカンが合わさってひらめいた。見事、最優秀賞を取り、「新商品開発プロジェクトを進めよ」との社命を受けた。
「世界初の商品をどこよりも早く出す!」と宣言
プロジェクトを牽引した川上さんは、メンバーたちに「世界初の商品を市場でいちばん先に出す! 絶対にどこよりも早く発売する。二番煎じにはならない」と宣言。発売日を「2012年度末」に設定した。この世にないものをゼロから開発し、商品化するには時間がかかる。だが、わずか2年で実現し、宣言どおり、12年12月にウェブ先行発売にこぎ着けた。
成功に至るまでには、お湯でスルッと落とせるこの商品とは異なり、幾重もの壁を突破しなければならなかった。社内の反応と技術的な問題だ。
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