根拠なき自信はつねにある
「子どもの頃から、可能性を閉ざそうとされればされるほど燃える。『それ無理でしょ?』と、よく言われるのですが、『いやいや、無理だって誰が決めたの? やって証明しましょう』と。『やれる根拠を出してください』って言われても、『いや、それは今からやって示しますから』と。私、根拠なき自信はつねにあるんですよ!」
冬だというのに、いい色に日焼けしている山田貴子さんは、エネルギッシュにこう語る。
2009年、大学院1年生のときにフィリピンの貧困層の若者がスカイプで英語を日本人に教えるビジネスを立ち上げた。会社名は、ワクワーク・イングリッシュ。「創業した9月9日は、ワ・ク・ワ・ク(0909)の記念日なんです」。
今でこそ、講師がフィリピン人のオンライン英会話はたくさんあるが、当時はまだ数社しかなかった。このビジネスモデルを友人たちに話すと、「フィリピン人に英語を習うなんて、ないでしょ」「まともな英語なの?」と反応は芳しくなかったという。
だが、可能性を閉ざされると火がつく山田さん。「フィリピン人の持っている最大の資源は英語。セブ島には、世界各国のIT関連企業がコールセンターを設置している。それがフィリピン人の英語が問題ない証拠」と考え、起業に向けて走り出した。
「問題」ではなく、「チャレンジ」
資金はまったくなかったので、親に「200万円貸してください」と頼み込んだ。すると、目標と期限を言い渡された。
「ボランティアでなく、ビジネスとして持続可能なものをやるなら、あなた自身が自立していないといけない。大学院を卒業するときに、大学院卒の初任給と同じだけ稼げるようになっているのなら、貸してあげます」
山田さんは根拠なき自信で「はい、わかりました」と答え、200万円を持ってフィリピンに行った。最初は会計の知識も何もなかった。
「オフィスを借りて、登記をして、パソコン5台買って、スタッフを5人雇いました。ヤバい、おカネがなくなった!と。どうしようと思いつつも何とかなるだろうって。振り返ると、大変なときはたくさんありましたが、それを全部『問題』じゃなく、『チャレンジ』と言い換えて、どうやって解決するかを考えてきました。もともと体育会系気質なので、スムーズにいくよりそのほうが面白いんです」
このガッツは一見、「男前」。だが、その根源には、あふれんばかりの愛と育成力がある「女前」だ。山田さんのこれまでの人生をたどろう。
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