歌舞伎町"深夜イタリアン"が愛されてきた理由

ミナミですべてを失ったシェフの夢の続き

歌舞伎町の”深夜イタリアン”「あかはる」の信念とは?(写真:筆者撮影)

日本随一の繁華街、新宿・歌舞伎町。普段なら深夜まで人通りが絶えないこの街も、新型コロナウイルスの収束が見えない中、行き交う人の数は激減している。

休業する店に加え、一部には閉店する店も出ているが、一方で工夫しながら営業を継続している名店もある。今回取り上げる、イタリアンレストラン「あかはる」もそのひとつ。朝まで営業する”深夜イタリアン”として、歌舞伎町で存在感を放ってきた。

筆者はライター業の傍ら、新宿ゴールデン街でバーを経営しているが、「あかはる」は地元で愛される店としてよく知られた存在だ。

歌舞伎町の人にとって、深夜0時は…

青春という言葉を辞書で引くと、「夢や希望に満ち活力のみなぎる若い時代を、人生の春にたとえたもの」とある。その反対だから、“青い春”ではなく“赤い春”。歌舞伎町のイタリアンレストラン「あかはる」と、店主の赤春さんの名前の由来だ。

「作家に憧れて、小説を書いていたときがあったんです。赤春は当時のペンネーム。自分の人生を振り返ってみると、すがすがしいものはとても書けない。青春の正反対になるだろうなと。そのペンネームを、お店の名前にもしたんです」

2019年12月、取材で訪れた筆者にそう話し、赤春さんは豪快に笑った。確かに、長髪にヒゲの風貌も、あかはるへの道のりも、すがすがしいとは言い難い。

お店があるのは、区役所通り沿いの雑居ビルの地下1階。人一人通るのが精いっぱいの階段を下りたところ。扉が閉ざされ、中の様子が見えないため、入るのに若干勇気がいる。

だが、店内に入ると別世界が開ける。柔らかな照明、木製のカウンター、壁に飾られた絵画。カウンター席だけの小さな空間は、健全かつスタイリッシュな雰囲気だ。

開店直後の19時過ぎのため、ほかに客はいない。何を注文するか迷っていると、「料理のことは俺に任せておいて」と、赤春さんがアラビアータと仔羊のローストを出してくれた。

本格的なイタリアンを手頃な値段で提供する(写真:筆者撮影)

見た目も味も本格的なイタリアンである。美味しいのはもちろんだが、高級店と比べて料金も手頃だ。アラビアータは1200円、仔羊のローストは2400円。実はこの値段設定にも理由がある。あかはるがオープンした2011年、営業時間は深夜0時から朝までという、深夜食堂さながらの営業形態だった(2019年からは19時開店)。そのため、客は近隣の飲食店や水商売関係者が多かった。

「深夜0時っていったら、歌舞伎町の人からするとランチタイム。だから、できるだけ安くしてあげたいなと思って、この値段にしたんです。今は後悔してるけど(笑)」

次ページ歌舞伎町に店を出したワケ
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