「新型コロナ対策一律10万円」にうんざりな理由 なぜ国民は「意味不明な政策」を絶賛するのか

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さて、そう考えるとおかしな点が出てくる。なぜ、埼玉県は居酒屋での夜の飲酒を当初制限しなかったのか。

それはおそらく怖かったからである。有権者の反発が怖かったからである。ほとんどの知事たちが緊急事態宣言を要求したのはなぜか。全部ではないが、一つの理由は、選挙活動である。毎日、記者会見でテレビに出る。コロナと戦っている勇姿を見せられる。有権者のために、有権者の健康を守るために戦っている姿を毎日見せ付けられる。だから、知事がやる必要もない感染者の報告を毎日自ら行い、不要不急の無意味な記者会見を頻繁に行う。

これはきわめて合理的で最高の選挙活動だ。そして、休業補償を国に要求し続けた。有権者のために戦い、カネも配る。そして、その財源は国に出させる。最高だ。しかし、国は、有権者の不評を買っても、そこは譲らなかった。際限がなくなり、実施不可能であるからだ。

「国が折れる」と思い込んでいた知事たちは焦った。そして、諦めた。その結果、緊急事態宣言をしながら、休業要請はしない、というちぐはぐなことが起きた。

勝負に出た小池都知事、挽回を狙った官邸

ここで、財政の豊かな東京の知事は、勝負に出た。ここぞとばかりカネをばら撒くことにした。他の県がどうなろうと知ったこっちゃない。東京が他県に配るわけではないので損はしない。そして、人気が出た。まわりの知事たちはやむを得ず、お茶を濁す程度の休業に対する何らかのカネを配ることにした。

さて、今度は緊急事態宣言に入らなかった知事たちも(一部の市長も)、自分たちも表舞台に立ちたいと、「緊急事態宣言をしてくれ」の大合唱となった。その結果、官邸側は困った。多くの追加指定をせざるを得なくなったが、7都道府県といったばかりですぐに追加するのも、「政策の失敗」と責められる。どうしよう。困っていたところに、10万円の話が降って湧いた。多少責められるのを承知で、少しでも挽回しようと官邸はこれにかけた。

「1世帯30万円で所得が大幅に減った世帯に絞って行う」という、一見もっとも適切な政策に対して非難が寄せられていた。とりわけ有識者、ネットから批判が大殺到し、それで、官邸も弱りきっていたし、そもそも安倍さんのテイストとしても全員に10万円のほうが好きだった可能性があり、後悔していたところだったかもしれない。

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