ながらくエコノミスト稼業を続けてきて、「こんな奇妙な形のグラフは見たことがない!」ということが連続している。
たった3週間でアメリカの「働く人の約10%」が失業した
特に驚いたのが、アメリカにおける「新規失業保険申請者件数」である。普通は「毎週20万件から30万件」がいいところだ。
ところが3月15-21日の週は、いきなり331万件にぶっ飛んだ。さらに翌週3月22-28日には687万件、そして4月9日に発表された最新週の分は661万件。わずか3週間で計1680万件の失業が発生したことになる。
同国の総人口は約3億2000万人。うち約半数が働いていて、雇用者の母数が1億6000万人とすると、1680万人の失業者はざっくり10%に相当する。4月3日に公表された最新の雇用統計では、失業率は前月比0.9ポイント悪化の4.4%であったが、これは3月上旬の状況を反映していると考えられる。来月1日に公表される4月分では、失業率はいきなり10%越えが確実と見るべきだろう。
普通、雇用は景気の遅行指標と言われる。リーマンショックの時を思い起こすと、2008年9月にリーマンブラザーズ証券が経営破綻した直後は、まず株価が下げた。次に企業収益の下方修正が相次いだ。それから貿易量が急降下し、鉱工業生産が落ちた。さらに個人消費が冷えて、最後にやっと雇用に影響が出たものである。2008年9月の米失業率は6.2%であったが、それが最悪期の10.2%に到達したのは2009年10月。つまりたっぷり1年かけて失業率が4%分、悪化したことになる。
ところが今回の「新型コロナショック」は、これとは全く違う。最初に株価が落ちるところまでは一緒だが、次の瞬間に個人消費が「蒸発」し、いきなり雇用がズドーンと落ちてしまうのだ。しかもいきなり2桁にまで!
こんな風に経済活動が凍り付いてしまうと、製造業に関するデータもこれからどんどん悪化するだろう。この連載では、これまで何度も「リーマン以来の・・・」と繰り返してきたけれども、訂正しよう。コロナショックの衝撃は「リーマン以上」とみるべきだ。
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