「新型コロナ対策一律10万円」にうんざりな理由 なぜ国民は「意味不明な政策」を絶賛するのか

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なぜ緊急事態宣言の網を全国に拡げるのか。これは、対象地域以外に抜け出そうとする人々に、そのインセンティブを与えないようにするためである。

「接触機会8割削減策がズレていると考えるワケ」でも書いたように、彼らは、普通のインセンティブ誘導は効果がない。「リスクがある」といっても、「社会の迷惑だ」といっても、それを無視して移動する(生活のためやむを得ずという場合もあれば、欲望を抑えられないという場合もあるだろう)。

東京都との境を封鎖するのでない以上、彼ら、彼女らを止めることはできないから、移動先でのインセンティブを奪ってしまおうということである。ギャンブルも風俗店も夜の店も、本来可能であれば午後5時以降の飲酒も全国的に禁止するのがベストだが、そこまではできなくても、それに少しでも近い効果を狙って、緊急事態宣言の網を全国にかける。これが目的だ。不要不急の移動を防止するだけでなく、本人の主観的には必要に迫られた移動も禁止するための緊急事態宣言だ。

なぜ最初から「全国」にしなかったのか

当初の7都道府県に福岡、千葉、埼玉を入れたのはそういう理由だ。同じ趣旨で、今回、北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県および京都府の6道府県が「特定警戒都道府県」に加えられた。

ではなぜ最初から全国にしなかったのか。それは自分の都合や欲望で移動する人々を甘く見ていたためである。7都府県への緊急事態宣言をためらっていて遅れてしまったように見えた理由は、この移動を恐れていたからだった。それは行動経済学というほどでもなく、社会をよく観察すれば予想できていたことだったのだが。分かっていてもできなかったのかもしれない。

それが、当初は全国を対象にしなかったもうひとつの理由だ。全国をいっぺんにやってしまうと日本経済が一気に冷え込んでしまうので、必要なところにとどめたかったのだ。

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