マスク不足に今も日本人が悩み続ける根本原因 アベノマスクは国の資金をドブに投じる愚策

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また、中国で感染が拡大していた2月には、日本に住む中国人が中国の親戚や友人などにマスクを送る動きがあった。しかし、財務省の貿易統計を見るかぎり、日本のマスク輸出は2020年1月、2月ともにゼロである。つまり、日本から中国へのマスクの流出が起きていたとしても、中国からの輸入量に比べればはるかに少なかったであろう。

国内でマスクが不足している時にマスクが海外へ流出していれば、政府はマスクの輸出を阻止したくなる。実際、韓国だけでなく、ドイツ、フランス、アメリカも今回の感染拡大のなかでマスクの輸出を禁止する措置をとった。しかし、輸出禁止はマスク価格の低下をもたらして国内のマスクメーカーの生産意欲を損ねる恐れがあるし、同じような苦境にある外国をさらに苦しめることになるため、報復を招きやすい(田中、2020)。

幸いにも日本政府はマスクの輸出を禁止することはなく、中国で感染が爆発していた2月にはむしろ日本の地方自治体や友好団体が中国にマスクを寄付した。3月になって日本で感染が拡大すると、今度は逆に中国の地方政府や企業が日本に大量のマスクを寄贈するようになった。つまり、2月に日本がマスク輸出を禁止せず、むしろ中国と連帯する姿勢を見せたことが、今日のマスク不足を多少なりとも緩和する役に立ったのである。

世界が同時に感染拡大に見舞われるなかでは、各国政府は自国での生産拡大を促進するとともに、マスクの国際的な流通を妨げないことが重要である。感染爆発は国による時間差を伴いながら起きているので、各々の時点で最も必要とされる国にマスクが向かうようにすることは、世界全体としてより早くウイルスを克服することにつながる(田中、2020)。

世界のマスク需要はこれからも増えていく

新型コロナウイルスへの感染は今やヨーロッパ、アメリカ、南米、さらにアフリカへと広がっており、世界でのマスク需要は今後さらに拡大していくであろう。中国のマスク生産能力が大幅に拡大したものの、世界のマスク需要はそれ以上に増え、中国産マスクの奪い合いになる可能性が高い。従って、日本が今後マスクの供給を確保するには国内での生産拡大を進めていくことが必要である。

実際、経済産業省は2月末からマスクの生産設備を導入する企業に対して補助金を出す政策を開始した。3月下旬までに13社の企業が補助金を受け、不織布マスク月産6760万枚分の生産能力が増える見通しとなった。しかし、日本でのマスク需要は目下月間9億枚ぐらいに増えていると思われるので、月産7000万枚足らずの増産では焼け石に水である。

経済学者は、マスクの不足はマスクの適正な値上げを通じて解決されるべきだと考えるであろう。もしマスクの値段が上がればマスクメーカーは増産意欲を高めて供給を増やすし、これまで余分にマスクを買い込んでいた人はマスクを買い控えるので需要は減り、需給の均衡に向かうはずである。

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