24歳でプロ野球をクビになった男が説く転身術 アスリートが優秀ビジネスマンになるために

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私は2012年に、横浜DeNAベイスターズから戦力外通告を受けた。当時、24歳。現役としてほかのチームでプレーする道も、球団職員として球団に残る道もオファーはなかった。ところが、思いのほか焦ることはなかった。むしろ、「これから何をやっていこうか」と好奇心と希望のほうが大きかった。ひとまず私は、クビになったその直後、ベイスターズの練習場の駐車場で、車の中から電話帳に入っているほぼすべての人に電話をかけた。

元横浜DeNAベイスターズ選手の高森勇旗氏(撮影:梅谷 秀司)

「今、クビになりました。今後のことはこれから考えますので、またご連絡するかもしれません。取り急ぎ、ご報告です。選手の間、大変お世話になりました」

という内容である。結果的に、この初動は大成功だった。この電話をかけたたくさんの方々の中から3人、「すぐに会おう」と言ってくださった方がいる。この3人がセカンドキャリアの道を切り開いてくれたことは、言うまでもない。3人は少ない、と感じた読者もいるだろうが、急に電話がかかってきて、「クビになったんで、今後ともよろしく」と言われて「すぐに会おう」と言ってくれる人のほうが珍しい。ともあれ、初動で予定が3件も入ったことは大きな収穫だった。

引退した多くのアスリートから相談を受けるようになったが、最初にしたほうがいいのは、クビになったこととともに「感謝」を伝えてほしいということを伝えている。

クビになると気持ちが動転するかもしれないが、その人を応援してくれていた人は、かなりいる。今後の方向性が決まっていなかったとしても、まず現状を報告すること。まだ現役を続ける意思があったとしても、いったんクビになったことには変わりない。そこまでの感謝を相手に伝えれば、誠意は必ず相手に届く。その中の何人かは、本気で相談に乗ってくれるかもしれない。それも、伝えないと起こりようがない。だから、まずは伝えること。

クビになったことは何も恥ずかしくない

そして、忘れてはならないのは、クビになったこと自体、何も恥ずかしいことではないし、後ろめたいことなど一切ないということ。全力で挑んで、通用しなくなった。ただ、それだけだ。アスリートが全力で挑んでいた日々は、応援していた人をどれだけ勇気づけていたことか。だから、堂々と報告し、そして感謝を伝えてほしいと、アドバイスしている。

私がクビになったのが10月、11月のトライアウトを経て、野球を辞めることを決めたのが12月。そこから、最初の3人を起点に多くの方々に相談に乗っていただいた。至った結論は、「まずは世の中を見て、そこからゆっくり決める」だった。当たり前のような結論だが、この結論に導いてくださった多くの方々には、今では感謝しかない。多くのアスリートが陥りがちなのが、「早く決めなければならない」という考えである。それは、主に2つの思いが根底にある。

1つ目は、仕事をしなければ、金銭的に生活に困るということ。結婚して子どもがいれば尚更のこと悠長なことは言っていられないという状況もある。そして2つ目、これが意外と大きくて、「仕事をしていないと思われたくない」という思い。「クビになったけど、ちゃんと仕事をしている」「俺は困っていない」と、強がりたい気持ちがどうしても頭をもたげる。
元プロアスリートというプライドも絡まって、「仕事をしていない」「困っている」とだけは思われたくないと、とにかく焦ってしまう。

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